~闇の中~
七不思議を追って、穴の中に落ちた二人。
そこで、何が起こるのか。
暗闇の先で、影に出会う。
彼、彼女は一体何を伝えようとしているのか……。
気づくと、穴の底だった。
「いてて」健斗は頭上を見上げた。
「一体どうなったの?」
「穴の中に落下したみたい」
七夕は辺りを確認した。「確かにそうらしいわね。それにしても、ここは何処なのかしら? 辺りは薄暗くて闇に包まれているわね」
「歩いて確認してみよう」
二人は歩き出した。しばらく行くと、立ち止まった。
「あそこに、光が見える!」
健斗は光の先を見つめた。
「影が動いた」
ここに来るまえにいた何者かの気配を感じたのを思い出した。
「もしかしたら」
追いかけた。だが、気配は突然、消えてしまった。
「いなくなった……」
健斗は、突然不安に襲われた。こんな得体のしれない場所に落ちてきて、ここがどなのか、どのようにして、出口を探せばいいのか分からない。
「ぼくたち大丈夫かな……」
「心配いらないわよ。本当なら、喜ぶべき事でしょ」七夕は言った。「ここは、わたしたちの待ち望んでいた場所なのよ」
健斗は身震いした。
「いい」七夕は言った。「わたしたちは、楽しいや、嬉しいだけがある世界を期待していた訳じゃないの。わたしたちが求めていたのは、夢や希望、その中には、恐怖や悲しみだってあるあるのよ。それがここなのかもしれない」
「確かに。これが、ぼくたちの望んだ世界なのかもしれない。だけど……」
「気に入らないの?」
「気に入らないわけじゃない。ただ、ちょっと驚いただけさ」
「なら問題ないわね」七夕は笑った。「なら、まず何をしようかしら?」
「でも、まずは現実への帰還方法を探さない?」
「そうね。いくらなんでもこのままじゃ不安すぎる。一端、帰り方を探して、それからどうするか考えましょう」
二人は歩き始めた。
「あそこに、何かあるみたい!」
健斗は顔を上げた。暗闇の中に現れたのは、遊園地だった。光が煌めいて、まるで夢の王国だだった。「どうして、こんな場所があるんだろう……」
「入ってみましょうよ」
「だけど、何だか不気味だよ」
七夕は笑顔を浮かべて走り出した。
健斗も、つられて走り出した。
「本当に、遊園地だわ。メリーゴーランドや、発車寸前のジェットコースターがある。だけど、不思議に誰もいないみたいね」
二人は、しばらく園内を歩いた。
「あれに乗ってみましょう」
健斗は七夕に誘われて、ジェットコースターに乗った。すぐに、発車のアナウンスがコールされ、ジェットコースターが動き出した。健斗は、振り落とされないようにバーに摑まった。
コースターがゆっくりと動き出した。そして、右へ、左へ、カーブしながら動いていく。そして、大きく口を開けたトンネルに入った。
突然、コースターがトンネルの中で動きを止めた。
「嘘だろ」健斗は絶句した。
七夕は、闇雲に動いて、安全レバーを外した。
「行きましょう」
「本気!?」
「何か起こる気がするわ」
健斗も、レバーを外した。
「影だわ!」
健斗は七夕のあとを追いかけた。影は、非常階段のある、奥の扉の奥に逃げ込んだ。閉ざされた扉を強引にこじ開けると、中に入った。辺りを見回すと、外は煌びやかな印象だったのに対して、中はひどく不気味な印象の部屋だった。
小部屋だった。壁全体が黒く塗りつぶされていて、窓は閉ざされている。
二人は、しばらく立ち尽くした。すると、突然、壁に、部屋全体にノックオンが響いた。壁全体に、血痕が付着した。
二人は、動けなくなって固まった。
外に出ようとしたが、とびらは閉ざされている。
「お願い、何とかして」
健斗は必死に頭を働かせた。だが、策は思いつかない。
「何か光ったわ」
健斗は言われた方向を見た。よく見ると、部屋の角に、小さな机の上に、手紙があった。健斗は、咄嗟に、それを手にした。
次の瞬間、部屋が静かになり、血痕は消えた。
「落ち着いたみたい」
健斗は手紙の一部を読んだ。「私……死にたい」
「どいうことかしら」
部屋を観察すると、カッターや、首つり用に縄が吊るされている。もし、この部屋の住人がいるとしたら、自殺を考えているようだ。
壁に張られた原稿の応募要項がある……。
「あれは?」
「住人の趣味だろうか」
いつの間にか、外へ繋がる扉が開いていた。健斗は、そっと外へ踏み出して行く。
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