~歩くような速さで~
ここから、本格的に、物語が始まって行きます。
ヒロインに深夜の学校の忍び込もうと誘われ、了承した主人公。ここから、どう展開していくのか。
一体、二人にどんな未来が待っていくのか。
そんなお話を書いていきます。
翌日。
「おはよう」
健斗は教室にいた。
「おい、おまえ健斗っていうんだろ?」
「そうだけど」
「昨日のあれ何だよ」
健斗は肩をすくめた。「きみ誰?」
「ああ、自己紹介が今だったな」少年は言った。「俺は、佐々木だ。佐々木、有馬。新聞部に所属している。情報には自信がある」
「そう」
「それで、七夕と知り合いなのか」
健斗は頷いた。彼女とのなれそめを話した。
「それで、どうしてあんな展開になるんだよ」
「さあ、自分でもよく分からない。ただ」
「ただ何だよ」
「彼女にすごく興味がわいて、思わずああなっていた」
佐々木は天井を見上げた。「お前、自分のしたことが分かるのか」
「自分のしたことって?」
「お前は転校してきたばかりで分からないかもしれなけど、七夕は変りものなんだ。それも、すっごく!」
健斗は頷いた。「それなら、何となく分かっていたよ」
「分かっていて友達になったのか?」
「まあ」
「何でだよ」佐々木は尋ねた。
「彼女には不思議な魅力がある」
「おまえ洗脳でもされたのか!?」
教室の扉をあけて、七夕が教室に入って来た。
何となく、それだけクラスが静かになった。
「来たぞ」
どこからともなく、そんな声が上がった。
七夕は、健斗の後ろの席に座った。
「おはよう」
「あなたバカなの? このクラスの状況分らない?」
「分かっている。でも、昨日約束しただろ。きみと友達になるって」
「仲間外れになるわよ」
「それならそれでいいさ」
佐々木がそっと自分の席に戻った。
健斗は、後ろにある七夕に振り向いて話した。
「きみ、この世界にがつまらないって言ったよね?」
「ええ、言ったわよ。つまらないと思わないの?」
健斗は考えた。「退屈と言えば退屈かな」
「私はすごく退屈。この世界は、どこに行ってもネットが張り巡らされて、世界中監視されているわ。もう、この世界に人間の目の届かない世界はないのよ」
「確かにな。もう、この世界に夢やロマンと呼べるものはない」
「でしょ」七夕は頷いた。「これが十九世紀ごろなら、私は船に乗って旅に出たわ。まだ夢とロマンがあり、世界は未知の世界で閉ざされていたんだから」
健斗は頷いた。「君の言う、つまらないって夢とロマンがないってこと?」
「そうね。そう言われてみれば、そうかもね。だけど、ただ、夢とロマンがあればいい手ものじゃないわ。誰も味わったことがない冒険や、謎、恋。そして、未知の大冒険がなければ、つまらないわ」
「なるほどね。それなら、間違いなくこの世界に存在しない代物だ」
「ね。だから、この世界はつまらないのよ」
健斗は机に鞄を置いたまま話に夢中になる七夕を見ていた。
クラスの連中は、そんな二人を静かに見守っていた。
やがて、予鈴が鳴り、ホームルームが始まった。一時間目の授業が始まり、それが終わった。健斗は、椅子に座ったまま窓の外を眺めていた。
「ねぇ、あなた知っている?」七夕は言った。
「何だよ」健斗は振り向いた。
「この学校には七不思議があるの」
「ああ、それならどの学校にもあるだろ。例えば、夜になる投獄二宮金次郎像とか」
「大抵はね」七夕は頷いた。「だけど、この学校の七番目の階段について知っている?」
「知らない」
七夕は笑った。「それがほかの学校の違って興味深いのよ」
「どう違うんだよ」
「それがね、異世界にへ扉が本当にあるらしいの」
「へぇ」健斗は適当に頷いた。
「興味なさそうね」
「べつに興味がない訳じゃない。ただ、よくある噂話だと思って」
「違うのよ」七夕は机から身を乗り出した。
「何が?」
「あのね。噂によると、この学校の生徒が本当に異世界にってしまったのよ。つまり、異世界にって帰ってこない生徒がいるのよ。それに、異世界に行くための方法とか、明らかに怪しげな噂が幾つもあるのよ」
「だけど、噂だろ?」
七夕は健斗のネクタイを掴んだ。
「あなた私の友達になったとか言っていたわよね?」
健斗は顔をそむけた。「どうだったかな」
「ダメよ、いまさら撤回なんてできないわよ」七夕は睨んだ。
「ぼくにどうしろって?」
「私と一緒に、深夜の学校に伸び込んで」
健斗は辺りを見た。
何人かのクラスメイトが、あわてて顔をそむけた。
「無理だよ」
七夕は睨んだ。「断ることは許さない。あなた携帯電話持っているわよね」
「おい、何するんだよ」
七夕は、健斗の鞄から携帯電話を取り出すと、自分の連絡先を登録した。
「これで、万事オッケーね。いい。今夜の八時、誰もいなくなった学校に集合だからね」
「おい、本気か!?」
「勿論よ。八時にしたのは、あまり速いと居残りの先生がいると思ってのことよ。いい、深夜の学校で私を待たせたりしないように気を付けなさいよ」
そう言って、七夕は黙り込んで窓の外を眺め出した。
放課後。
「お前、とうとうあっちの世界に行ってしまったな」佐々木は言った。
佐々木は、このクラスで最初になった男友だちだった。
「七夕のことか……」
「まあ、悪い事じゃない。ただ、ちょっと心配で」
「ぼくの事なら心配いらない。彼女とはうまくやっていけそうな気がする」
佐々木は首をふった。「だから心配なんだよ」
「べつに彼女は悪い子じゃないよ」
「俺も、彼女が悪い奴だとは言ってない。ただ、変わっているっていうか」
「それなら知っている」
「そうじゃない。例えばだな……。そうだ。彼女が変わり者だと噂されるようになったきっかけを知っているか?」
「それは知らないけど」
佐々木は言った。「彼女は、小学生時代、警察に逮捕されそうになったことがある。例えば、深夜の学校に忍び込んだり、立ち入り禁止の美術館に忍び込んだりと、とにかく事件を起こす天才なんだ。だから、おまえも巻き込まれないか心配で」
健斗は七夕との約束をもいだした。
「お前、彼女のと約束していただろ」
「聞いていたのか」
「嫌だって聞こえるよ」
健斗は考えた。「やめるべきかな?」
「忠告しておくぜ。彼女から離れるなら、今しかない。もし、この先にへ進むというのなら、止めはしないけど、その先の覚悟はしておけよ」
「覚悟って?」
佐々木は空を青で深呼吸した。
「最悪の場合、警察に捕まる事だったる。そうなれば、学校は退学だ」
健斗は生唾を飲み込んだ。
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