~新たな出発~
異世界から帰還した二人。
平和な日常を過ごしている。
だが、退屈でもあった。
そんな日常を打破するために、あの女はあることを提案する!
ユメはシャープペンを鼻の頭にのせた。
「何か、面白い事ない?」
健斗は肩をすくめた。「ない。しばらくはゆっくり過ごそう」
「しばらく?」
「そう。しばらく……」
ユメは真剣な面持ちで尋ねた。
「彼女、いつ学校に戻って来るの?」
二人は、異世界から少女を連れ帰っていた。
「まだ、時間が必要だ」健斗は大きく吐息を漏らした。「あんな事件があったのに、いきなり元気になりました、とはいかないだろ。体調だって、精神的なものだって……」
「分かっているわよ」ユメは頷いた。
「いったん、この話は置いておこう」
「彼女のが元気なったら、また話しましょう」
佐々木は、自分の席から身を乗り出した。
「おい、おまえらうるさいぞ」
「べつにいいでしょう。今は、自習中なんだから、少しくらい話してもいいのよ」
「それが問題なんだよ」
ユメは肩をすくめた。「それより、話しかけてきて何よ?」
「お前ら、退屈しているのか?」
ユメはにやりと笑った。「私に話しかけてるなんて、変わり者ね」
「ふふ。俺は、新聞部だ。面白いネタのためなら、身体を張ることも辞さない」
「あんた、そんなキャラだっけ?」
「俺は、おれだ」佐々木は不敵に笑った。「どうする? 情報が欲しいか」
健斗はユメの顔を見た。瞳をキラキラさせている。
「おかしな情報だけは、やめてくれよ」
「安心しろ」佐々木は微笑んだ。「お前ら、部活に入部しないか?」
「興味ないわよ」ユメは言った。「中学に入学してから、そんなものは一通り、体験入学したわ」
「だったな」佐々木は肩をすくめた。「でも、健斗は知らないだろ」
「何が?」
「彼女は、すべての部活を体験入学している」
「本当か!?」
佐々木は腕を広げてジェスチャーした。。「彼女は、中学に入ると同時に、すべての部した。運動部から、文芸部まですべてだ」
「そんなことできるのか?」
「ああ」佐々木は頷いた。「仮入部という形や、ピンチヒッターとしてなら。多くは、スポーツ部だ。サッカー、バレー、バスケ、野球など、あらゆる競技に参加できる。彼女の場合、なまじ運動神経がいいから、どの部活からも、スケッターとして呼ばれていたよ」
健斗は頷いた。「あり得そうだ」
「俺には、解けない謎がある!」佐々木はユメを見た。
「なぜ、全部の部をやめたんだ?」
「退屈だったからよ」
「それはひどいな」
「言い方の問題よ。すべての競技に、一通り参加したわ。運動部も、文化部も一通りね。でも、わたしの思い描いていた活動ではなかった」
「思い描くとは?」
「何となくだけど、想像できる範疇だったのよ」
「あれだけ活躍して?」
「それは問題じゃない。私にとって大切なのは、まあ、一つは何でもやってみる事と。次に大切なのは、私の想像を越えるような、特別な体験ができるかよ」
佐々木は肩を落とした。「お眼鏡には敵わなかった……」
「でも、十分楽しかったわよ」
「君にとってはね」佐々木は肩を落とした。「ほかの正規の部員たちは、突然、現れた人間に、レギュラーとの座を取られて、落ち込んでいた者もいたはずだ」
「それについては、申しわかなかったわね」ユメは頷いた。「でも、わたしが活動していたのは、せいぜい一月らいだから、よく言えば、いい刺激になったんじゃないかしら」
佐々木は、吐息を漏らした。
「それで、何の話しだったの?」
「この学校では、何かの部に参加しなければならい」
「そんなルールあったかしら?」
佐々木は、生徒手帳を見せて言った。
「本当に書かれているわ」
「だから、俺はミステリー研でもすすめようかと」
「横暴よ。生徒に、無理やり部活に参加させようとするなんて」
健斗は首をふった。「ルールに文句言っても仕方ない」
「だけど」
「文句があるなら、変えるしかない」
「それは無理よ」ユメは立ち上がった。
「とはいえ、ルールで決まっている」
ユメは立ち上がった。「そうよ。どうして、気づかなったのかしら」
「突然、どうした!?」
「私が、部を作ればいいんだわ」
突然、立ち上がったユメに、クラスがざわついた。
「佐々木くん?」
ユメは尋ねた。
「はい、何でしょう」
「この学校って、生徒が部を作ることは可能?」
佐々木は生徒手帳を見た。
「校内の規則によれば、作ってはいけないというルールはない。つまり、可能だ!」
「もらったわね」ユメはほほ笑んだ。「いい、二人は強制的にわたしの部に入りなさい。そしたら、わたしが会長として、部を発足させるわ!」
「本気か」健斗は目を見張った。
「やるからには徹底的にやる!」
「一体、どんな部だ?」
ユメは不敵にほほ笑んだ。「私、ずっと興味があったことがあったの!」
「なんだ!?」
「冒険者クラブよ。この世のありとあらゆる未知、不思議、謎に立ち向かうの」
「それ、楽しいのか?」
「当然よ。私たちには」ユメは目配せした。
健斗は無言を貫いた。まずい予感しかしない……。
二人は、学校の七不思議を追っていて、異世界への入り口を見つけていた。現状として、なぜそれがあるのか、どのような仕組みで出来上がったのかは、まったく分からない。
二人は、携帯にあるアプリによって、異世界に行き来できるようになっている。
佐々木は言った。「そもそも、先生が認めてくれるか?」
「先生は関係ない」ユメは言った。「関係があるのは、私たちが、やりたいか、やりたくないかよ。そもそも、クラブというのは、強制されてやるものじゃない。自主的に参加するものよ」
佐々木は賛同した。
「確かに。俺は、賛成だ」
「なら、佐々木君」ユメは不敵に笑った。
「何でしょう」
「用紙を渡すから、今日中に提出して来て!」
「俺の役目はパシリ?」
ユメは頷いた。「昇格があるわ。あなたは、一番下から這い上がって来なさい。それに部員が入れば、おのずと昇格できるわ!」
佐々木は頷いた。「でも、おれ新聞部に所属しているけど?」
「二つ掛け持ちでも構わないわよ」ユメは健斗を見た。
「それから、あなた!」
健斗は寝たふりをした。
「あなた逃げられないわよ。我が部の副部長に任命するわ」
健斗はだんまりを決めて、目を閉ざした。
「おいおい。俺は、下っ端で、健斗は副会長かよ」
健斗は全神経を、眠りの世界に集中させた。
「まったく、うらやましい」
健斗は心の中で、佐々木の頭の中を心配した。
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【余談】
今日は体調がよかったので、海でひなたぼっこした。
背中がやけた……。
色白から、チョコレート色にww