~帰還からの日常~
異世界から帰還した。
失踪した少女を連れ帰り、休憩のためゆっくり過ごすことに。
主人公は店の手伝いをすることに。
この家では、はたらかざるもの食うべからず。
自分の食費は自分で稼げ。
稼げなければ、ご飯は無し。
主人公は、来週の食費をかけて働くことに!
翌日の、放課後。
「体調はもう大丈夫なの?」
健斗は肩をすくめた。「まだ、本調子じゃない」
「そうよね。あなた、ずいぶん無理したんでしょう?」
健斗は顔をそむけた。
「まあ、話したくないならいいわよ」
健斗としては、あの出来事をどう伝えればいいか分からなかった。
「そのうち話してくれればいいわ」
健斗は頷いた。
「それから」ユメは付け加えた。「花咲紗希のことだけど、彼女は無事よ。今は、病院で安静にしているわ」
「どうして、知っているの?」
「あの後の事だけど、目を覚ましたら、あなたや彼女が気絶していたのよ。そりゃあ、驚いたわ。だけど、そのままにしておくことはできないから、現実に戻って、救急車を呼んだのよ。あなたに関しては、うっすら覚えていない? 家の前まで運んであげたのよ」
「ぼくに付き添ってくれたの?」
「彼女については、匿名で連絡したのよ。怪しまれないように」
「ありがとう」健斗は礼を言った。
「いいのよ。わたしも夢うつつだったけど、あなたに助けてもらった気がするから」
健斗は窓の外を見て誤魔化した。
「それでなんだけど、また異世界探索に行かない?」
健斗は体を震わせた。
「何言っているの」首をふった。「あんな目にあって、また行きたいだなんて」
「違うのよ」ユメはにやりと笑った。「あんなことがあったからこそ、何が起こったのか、ちゃんと確かめたいのよ」
「いま重要なコマンドがあるとすれば、『命、大事に』だ」
「何それ」
「ひとむかし前のコマンドだ」
「コマンド?」
「まあ、とにかく、君といると退屈しない」
ユメは健斗の襟首をつかんだ。
「逃げないで」
「許して」健斗は足をじたばたさせた。
「わたしの命令は絶対よ」
「わかった。だとしても、今は本当に体調が心配だ」
ユメは手を離した。「確かにね。今は、待ってあげる」
健斗はほっとした。
「だけど、体調が回復したら、わたしとまた探索に行きましょうね」
その週の土曜日。
「体調もだいぶ良さそうだな」
叔父の源助が言った。
「元気になりました」
「若いうちには無茶もやるだろうから文句は言わねぇが、身体は大事にしろよ」
健斗は頷いた。
「で、この家のルールは知っているな?」
「働かざる者、食うべからず……」
「よく覚えていたな」源助はにやりと笑った。「しばらく働いていなかった分、今日はこき使ってやるから覚悟しておけよ」
健斗は叔父に背を向けた。
「逃げるなよ。逃げてもいいが、来週の飯がなくなるぞ」
健斗は立ち止まった。「どういうこと?」
「だから、そのままの意味だ。働かなったら、飯はやらねぇ」
「オニ!」
「おお、俺は、鬼と悪魔を掛け合わせたようなお男だ」
「鬼畜!」
「何とでも言え。だが、今日働いて稼げなかったら、本当に飯はないからな」
「嫌だ」健斗は床に両腕をついた。
「この家のルールだ。働かざる者、食うべからず! 今日働いて、稼いだ分が、おまえの来週の食費だから、気を引き締めて働けよ」
健斗は顔を青くした。
「もし、稼げなかったら?」
「最悪、水と乾パンだけだ」
「おかずは?」
「当然、なし。水とパンだけだと、ひもじいぞ」
健斗は怯えながら尋ねた。
「そもそも、乾パンって何?」
「乾燥した硬いパンだ」
「そんなの辛すぎる」健斗は立ち上がった。「は、働かせて下さい!」
「よし。その意気だ!」
健斗は店に出た。
源助に言われている店番だったが、悪い気はしていなかった。というのも、源助が家の手伝いをさせているのには意味があるとも思っていた。ただ、甘やかすのではなく、将来、大人になってから困らないようにと、訓練してくれている。
源助の優しさが感じられた。
源助は、昔ながらの男だったが、中身は温かった。
健斗はシャッターを開けると、骨董屋の準備にとりかかった。店の準備は、とくに決まったものはなく、何もないといえば、何もない。
あると言えば、自分で仕事を探して働くことだ。
最初の仕事は、店内の掃除を選んだ。
十五分ほど、掃き掃除をした。
清々しい!
健斗は、店内にあった段ボールを見た。そこには、扇子が入っていた。以前、働いたお金で買った商品だった。
それを、棚に飾った。値札には、一万円と表記した。
もともとの値段は、五千円だった。
しばらくして、客がやって来た。
「うわぁ。古いボケていて、ガラクタばかりの店だなぁ」
健斗は黙って座っていた。
「あの」
健斗は頷いた。「何でしょう?」
「ここ、掘り出し物とかあるの?」
「勿論。何でもそろっている」
客は、棚に飾ってあった扇子を見た。「これ、とっても掘り出し物とは思えなけど?」
健斗は説明した。店には掘り出し物ばかりがある訳じゃない。
「なんだ。やっぱり、ガラクタばかりの店か」
健斗は店内を見渡した。所狭しに商品が並んでいる。
「この店には、確かに掘り出し物がある!」
「何言っているの?」
健斗は、店内に置かれたいくつかの品を持ってきた。
「何だよ」
「三つの商品の中に、一つ掘り出し物がある。一つは、一万円の商品、もう一つは、二万円。三つ目は、三枚円の商品。この中の一つは、確かに十枚円ほどの価値がある」
「嘘つくなよ」客は首をふった。
「本当だ」健斗は胸を張った。
「じゃあ、もし、もし噓だったらどう責任取ってくれるんだよ」
健斗は首をふった。「それは、自分の見る目がなかっただけだ」
男は、慎重に吟味した。そして、商品の中から、一番高い三枚円の商品に目をつけた。
健斗は嘘を言っている訳ではなかった。以前、商品を調べたときに、店の展示価格より、値上がりした商品があった。はっきり言って素人のみ目立ったが、本物の可能性があった。
男の見る目があれば、どちらであっても、見破れるはずだ。
男は、携帯電話で商品を調べた。
「これを貰うことにしたよ」
健斗は頷いた。「本当にいいのか?」
「ああ、間違ない。本物は、三万円の値札が付いた商品だ」
健斗は頷いた。
「では、お買い上げ有難うございます」
客は満足げに帰って行った。
その後で、店主である源助が現れた。
「もう商品が売れたのか」
健斗は、お金をひらひらさせながら、胸を張った。
「これで最低限、食いっぱぐれなくてすんだな」
「当然だ」
「それで、何の商品が売れたんだ?」
健斗は事情を説明した。
「なるほどな」源助は髭をなでた。「確かに、そいつは見る目があったな」
「本物だったの?」
源助は首をふった。「残念ながらレプリカだ」
健斗はひとまずほっとした。本物であったのなら、売れたことについて嬉しいが、店側としては損したことになってしまう。
源助は説明した。
「あれは、俺の友達に作ってもらったものだ」
「そうなの!?」
源助は頷いた。「だがな。もっぱら、価値がなかったわけでもない。お前が売ったのは、レプリカの茶碗だったが、その茶碗の価値としては低い。だが、俺の友達っていうのが、また曲者でな。今じゃ出世して、名のある陶芸家だ。そんでもって、そいつの作る作品は、数十万ほどで取引されている」
健斗は震えた。
「売ってよかったの!?」
「ああ。あれは、レプリカの茶碗だし、その価値を知らないものが持っていても、本来の価値は見いだせないだろう」
「それなら逆に、売るのももったいない」
源助は笑った。
「俺はな、世の中にはそういう遊び心があってもいいと思っている」
「そうなの?」
「ああ、そうさ。俺の友達も、そんな遊び心を持った、意気のいい友達だった」
昼時になって、店を閉めた。
ここまでお付き合い有り難うございます。
投稿時間が少し遅れました。
ごめんなさい。
なるべく、毎日投稿できるよう頑張ります。
応援よろしくお願います☆
もし、読みづらい箇所や、不明な点、
アドバイス等ありましたら、参考にさせていただきますので、
お知らせください。
【余談】
私は、小説家を目指しています。
まだまだ未熟で練習中です。
もし、応援いただけるなら、みなさま声を参考にしながら、みんなに喜んでもらえる小説を書こうと思っています。
今日は、台風の影響のせいか、雨が降っています。
私は、西の空を見ながら、小説を書いています。
次に、どんな話を書こうか、悩み中です。
これを読んでくれた人が、何を思い、何を書いて欲しいのか。
ここをこうしたら、もっと良くなるのに。
これが足りない。
ここが読みずらい、など。
私にはわかりません。
それが辛く、分からない自分がもどかしい……。
よく漫画や、小説にありがちな話ですが、少し病弱です。
なので、書ける日と、かけない日があります。
いい訳にするつもりはないです。
ただ、今の思いを保存しておこうと思って、綴っておきます。
ここまでお付き合い、あり有難うございました。