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男爵令嬢リリアーヌ様が学園に転入してきたのは、二年と少し前のこと。


リリアーヌ様と直接会ったことはない。学年が違うし、リリアーヌ様は大抵、男子生徒と一緒にいたからだ。

王太子殿下や他の令息たちといつのまにか仲良くなっていて、卒業したときにはどういうわけか殿下も他の方も幼い頃からの婚約を破棄していた。皆、リリアーヌ様に恋をしたのだという。


そのことで卒業パーティでは一波乱あったらしいが、一学年下の私は出席していなかったし、出席者には箝口令が敷かれていて発表された事実以外はよくわからない。

つまり私が知っているのは、王太子殿下と宰相令息と魔導士長令息と騎士団長令息がそろって婚約破棄をして、王太子殿下とリリアーヌ様が結婚した、ということだけだ。

私から見ると、リリアーヌ様はかわいらしいが、王太子殿下たちの婚約者だった令嬢方のほうがずっと美人だ。


それだけじゃない、性格も成績もリリアーヌ様が優っているところはない。

……そう、面識はないけれど、私はリリアーヌ様に好感を持っていない。




その理由は目の前の抜け殻みたいな人にある。


抜け殻は私の夫だ。結婚した頃にはもう目の下にクマを作り、痩せて薄暗い顔をしていたが、最近さらにそれに拍車がかかっている。


皆の心を奪ったリリアーヌ様は王太子殿下と結婚したが、他の男性方はそれでも思いを残したまま、リリアーヌ様のために生きることにしたんだそうだ。


しかし高位貴族の跡取りが独身でいることは難しく、宰相令息、つまり現在の私の夫も結婚せざるを得なくなった。貴族には珍しく夫は一人っ子なのだ。

あいにくと元婚約者の令嬢は既に別の人のもとに嫁いでいる。そこで白羽の矢がたったのが私だった。


一応私にも婚約者はいた。あまり会ったことはなかったけど、位もまあまあ、見た目もまあまあ、仕事もできるっぽい、性格もまあまあの及第点の人だった。

その人に他のもっといい縁談がきて、私との婚約が破棄されたのもリリアーヌ様のせい。

騎士団長令息がリリアーヌ様を好きになって婚約破棄をした結果、その元婚約者の令嬢と彼が結婚することになったのだから。


そして玉突きのように押し出された私は抜け殻と結婚した。


それでも私も少しは夢を持っていた。政略結婚だけど好きになれるかな、なれたらいいな、仲良くできたらいいな。できたら、恋とか? 前の婚約者には穏やかな好意しか持てなかったけど、もしかして、だって今度の婚約者はあの。

そんな私に抜け殻は言ったのだ。


「俺の心はリリアーヌとともにある。今までも、これからもだ。結婚はせざるを得ないが、君を愛することはできない」


夢が吹っ飛んだ瞬間だった。


私の卒業後すぐ結婚したけど、今現在ただの同居人である。そのうち、子供は? って話が出るようになったら子供ができないのを理由に離婚しようと思っている。

そんな理由で離婚したら、私もう再婚できないだろうなあ。でも、こんな結婚を続けるのも不毛でしょ?


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