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4.部活もちゃんとやりましょう

佐々木オススメの店に入った俺は、それとなくベルタに関する情報を集めた。


そのうちベルタの今の状況がそれとなく分かった。


ベルタの現在の名前は鈴瀬紫音であること。

同じ学校に通う同級生だということ。

そして彼女はデビューしたての新人歌手としてかなりの人気を博しているということ。


なぜ、どうして、あなたが。


聞きたいことは山ほどあった。しかし佐々木や柴田にそれを伝えたところで不審がられるだけだろう。


しばらく混乱した後、二人と別れて冷静に考えた。


鈴瀬とベルタが同一人物だという確証はない。ただそっくりの赤の他人ということもありえる。


だが俺はたしかに前世の最期にベルタへの復讐の機会を望んだ。つまりこれで俺の願いを叶えることができるかもしれない。


幸いにもベルタ…いや、鈴瀬は有名人だ。弱みの一つや二つ見つけて晒してしまえばいい。


そう。これは絶好の機会なのだ。


「…やってやる…」


自然と口角が持ち上がる。当然だろう。前世の俺を殺した張本人なのだから。


今の俺はきっと…アイツと同じような顔をしている。


それでも厭わない。


俺はベルタへの復讐の決意を固めた。





鈴瀬は歌手としての活動が忙しく、あまり学校には来ないらしい。


弱みを探ろうにも、毎日のように彼女の不在を確認しているばかりで、何も進捗のない日々を送っていた。


「有馬、ミーティング行くぞ」

「すぐ行くよ」


鈴瀬を見つけることのできない間に、俺はすっかりこの世界のシステムに順応した。


妹や佐々木、柴田の行動を観察し、一般的な男子高校生である“有馬菊”を構築していく。あの電話…スマホとやらも使いこなせるよつになった。


お陰で今のところ俺の正体がバレる気配はない。


今日はミーティングがあるらしい。課題と言われていたプリントを仕上げてしまってから、教室の入り口に立つ柴田に駆け寄る。


「悪い、待たせたよな」

「別に」


そう言った彼だが、実のところ十分ほどは待たせているはずなのだ。


彼のクラスはホームルームの時間が短いし、俺が課題を済ませるまでどこかで暇を潰していたのだろう。


案外いい奴なのだ、こう見えて。


「今日は佐々木は来ないのか?大事なミーティングって聞いたけど」

「あいつは用事。俺が後で直接伝える」

「そうか」


音楽室には既に多くの部員が集結していた。


北ノ花高校吹奏楽部——それが俺の所属する部活だ。

部員数は七十名ほど。実績はかなり華々しく、これまでに数多くの有名演奏家を輩出しているのだという。


そんな伝統ある部活の部長を務めるのが、意外にも柴田カイという男だった。


「じゃあ、ミーティング始める。よろしく」


よろしくお願いします!と大きな声。この部活では挨拶が基本らしい。


まるで前世の騎士団のようだ。


俺も自然と声を張る。有馬の身体にもこの習慣は色濃く染み付いているのだろう。


「今度のコンクールについての話、楽譜はもう貰ったと思うけど、合わせは一週間後から。それまでは個人練とパート練」


柴田の話を聞きながら手元に視線を落とす。


先日配られた楽譜は、どうやら次のコンクールの演奏曲らしい。


音源をインターネットで聞いたが、かなり難易度の高そうな曲だ。前世ではこんな技巧を凝らした演奏は聞いたことがない。


隣国では芸術が発達していたからこういうのもあったのだろうか。


「それから、今回も目標は全国大会。それは変わらない」


俺たち部員を見据える柴田の目は真剣だ。真っ直ぐで揺らぎない。

その視線に思わずゴクリと唾を飲む。


「皆で全国に行くぞ」

「はい!」


一際大きな声が音楽室に響いた。

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