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Trigger〜悪霊浄化異聞〜  作者: 藤波真夏
悪魔の雄叫び編
17/130

二つの魂〜What I saw in the sun〜

二つの魂〜What I saw in the sun〜



 私が見た子供は一体何だったんだろう? あれは確かに悪霊の気配がした。

 でもどうして悪霊が見えたんだろう。昼間はどんなにベテランの浄化師でも見える人はいないはず。なんで見えたんだろう。

 もしかしたら、私は悪魔に魂を売ってしまったんだろうか。

 そんな不安を抱えながら、私は作戦準備室での会議に参加していた。



 ミホとスセリは回復し、会議に参加していた。

 会議での議題はあの謎の悪霊だ。あの悪霊と遭遇したスセリとミホの証言が重要な鍵になってくる。

 スセリとミホは立ち、状況を説明し始めた。

「最初に私が悪霊に弾丸を一発。そのあと、ミホが矢を一本打ち込んでいます。その直後に悪霊が大きな声を出して耳を塞がないと鼓膜が破れるのではないかと思えるほどの大きさでした」

「あまりの大きさにうちらは気を失ってしまいました。うちの記憶はそこまででそのあと何があったのかはわからんです」

 ミホは言った。

 するとヨシキはスセリにある質問をした。

「阿部。金山さんが言ったんだが、昼間悪霊の姿が見えたようだったと。見えたのか?」

「・・・見えました」

 スセリは小さな声で答えた。それには全員が驚いた。ヨシキはもう少し詳しくとスセリに聞く。スセリは思い出しながら言う。

「靄の中に小さな子供が見えたんです」

「子供?」

「はい。子供は泣いていました。来ないで! って言っているような気がしました」

 スセリの言葉にヨシキは腕組みをする。悪霊の正体を掴みかけているようにも見える。しかし確信は持てない。

「そうか。ありがとう」

「ヨシキさん。私、異常なんでしょうか?」

 ヨシキに対して不安な声を出すスセリ。普通は気配こそ感じるが見えないのが当たり前の悪霊を見ることができたスセリは怖くて仕方がない。

 他人と違うことが怖いのだ。

 まるで自分が化け物のように感じてしまう。そんなスセリに助け舟を出したのはサトミだった。

「そんなことないわ。昼間に悪霊が見えるなんて私たちからしたら羨ましいの。その悪霊が見える目は私たちヤタガラスにとって武器になると思う。そうですよね、金山さん」

 サトミがヒジリに話を振るとヒジリは大宮の言う通りだ、と続ける。

「確かに怖いかもしれない。異常と感じるかもしれない。だが、その力はきっとヤタガラスにとってなくてはならないものだ。この事件のほとぼりが冷めて落ち着いたら、俺から専門の人へ連絡を取ってみよう」

「・・・ありがとうございます」

 スセリはお礼を言った。



 その夜だった。

 その日は悪霊出現の通報がなく、平和な夜になった。

 ヒジリは一人所長室で書類を片付けている。すると扉をノックする音が聞こえた。

「どうぞ」

 ヒジリがそう言うと扉が開いた。入ってきたのはシュンだった。

「鳴海。どうした?」

「阿部のことですが、昼でも悪霊が見える目をどう思います?」

「急にどうした。確かに、俺も驚いている。だが現時点では昼に見える理由はわからない。まずはどのくらいのものか見極める必要はあるな」

 ヒジリはそう言った。

「阿部の目を俺が見極めます。今度の緊急通報が来た際やパトロールの際は阿部を俺につけてください」

「阿部を?」

「はい」

 シュンの目は真剣そのものだ。ヤタガラスの中でヒジリの次に浄化師のキャリアがあるのはシュンだ。ヤタガラスのスナイパーの異名を持ち、見分ける目は優れている。

「そうだな。お前に任せるのが得策かもしれないな。そうさせてもらう」

「ありがとうございます」

 シュンはヒジリに頭を下げた。シュンは部屋を出て行こうとすると、ヒジリは最後にシュンに付け加えた。

「鳴海。阿部をいじめるなよ」

「分かってますよ」

 シュンはそう言って部屋を出て行った。

 ヒジリは書類の中にあるある項目を探る。それは、悪霊対策部からもらった研究者リストだった。

 悪霊対策部は浄化師の管理・権利を守るだけが仕事ではない。悪霊を研究する研究者や浄化師の治療を専門的に行う研究者の名前や所属地をリストにまとめ、それを管理している。

 ヒジリが持っているのは、悪霊対策部からもらった研究者のリストだ。

 内容はやはりスセリの目だ。

 スセリの目に関してはヒジリも予想外だらけで対策を打ちようがない。彼女の才能を有効的に活用させるためには研究者からの助言と見解が必要だ。ヒジリは信頼できる人物を探すためにリストを開いたのだった。


 明智大学大学院アケチダイガクダイガクイン


 トウキョウにあるとある大学の名前がリストに載っていた。それがヒジリの目に入る。

 明智大学大学院は、トウキョウで唯一悪霊対策部が認めた悪霊や浄化水晶の研究者が所属する大学院である。

 悪霊対策部からのお墨付きをもらっているため、頼みごとをするに価する信頼できる場所だ。

 ヒジリはその夜遅くにも関わらず電話をかけるヒジリ。

「夜分遅くにすいません。日本御霊浄化組合の金山です。はい、先生にお繋ぎしてください」

 ヒジリは一人で専門機関へ連絡を取っていた。



 翌日だった。

 スセリは車に乗っていた。そして緊張していた。

 なぜか。

 その理由はスセリが座る助手席の隣で運転している人物が影響している。

「どうした、阿部」

「いえ! なんでも!」

 シュンだった。

 シュンは昨日にヒジリにスセリを付き添いにつけて欲しいと頼み、その願いが叶えられた。しかし、スセリはその反面緊張してしまう。ヤタガラスで一番クールで近づきがたい雰囲気を醸し出しているからだ。安易に話しかけられない。話しかけるのは必要最低限だ。

 車の中で会話も一切なく、沈黙が流れる。

 スセリはいち早くこの場から抜け出したくてたまらない。

「阿部」

「はい?!」

 いきなりシュンに話しかけられて声が上ずる。スセリはシュンの声に耳を傾ける。

「今日はアオキ・シバ地区のパトロールだ。気を抜くなよ」

「は、はい!」

「あと・・・」

「なんですか?!」

「・・・緊張しすぎだ。もう少し落ち着け」

 シュンは自覚していた。自分のせいでスセリを緊張させていると。しかし、どう言葉をかけていいのか分からない。

 シュンは結局スセリに声をかけられず、そのままアオキ・シバ地区へと向かったのだった。

 まずはアオキ地区へ到着する。

 スセリはシュンの後ろをついていくような形でパトロールをする。

 特に悪霊の気配は感じない。

「阿部。気配を感じるか?」

「・・・いいえ。感じません」

「そうか」

 スセリが言ったことが正しいのか分からない。シュンが何も言わないのが怖い。スセリはただシュンについていくことしかできなかった。

 するとシュンがピタリと足を止める。その瞬間、スセリは悪霊の気配を感じた。するとシュンがライフルを取り出す。

「阿部。何か感じたか?」

「悪霊の気配がします」

「そうか。俺もだ」

 シュンのライフルの安全装置が外れた。近くに悪霊がいる証拠だ。しかし時間帯は昼間。シュンには気配は感じても姿を捉えることはできない。

 するとシュンはスセリに指示を出した。

「阿部。今から気配がする方向に弾丸を撃ち込む。お前は影に隠れて、悪霊の姿を目に焼き付けろ」

「ラジャ」

 シュンの指示通り、スセリは物陰に隠れホルスターから小型拳銃を抜いて準備をする。姿が見えないシュンにとってみれば悪霊の気配だけが頼りだ。見えない敵を狙撃するのはベテランでも難しい。

 シュンは全神経を集中させて、ライフルを構える。その緊張感は離れた場所にいるスセリにも感じるほどにピリピリとしている。

 数秒後のことだった。シュンがものすごい速さでライフルを構え弾丸を撃ち込んだ。するとあの声が響き渡る。シュンは耳を塞ぐ。

「阿部!」

 シュンが叫ぶ。スセリは声の方向を見る。すると目にはっきりと入る。幼い子供が泣いている姿が。

「子供です!」

「あ?!」

「子供が泣いてます!」

「見えるか?!」

 シュンが耳を塞ぎながら言う。その泣き声は前回とは比べものにならないくらいに強く、スセリたちを拒んでいるかのように見えた。シュンがライフルを構えた。するとスセリは大声で叫んだ。

「撃たないでください!」

「阿部?!」

 スセリはゆっくりと悪霊に近づく。

 スセリは悪霊の前で動かない。このままでは悪霊に攻撃されてしまう。この距離で攻撃をされれば大怪我だけでは済まされない。スセリは幾度となく大怪我を負ってきた。これ以上の大怪我は命にも直結し兼ねない。

 シュンの心配をよそにスセリに悪霊は攻撃を仕掛けない。そして静かに悪霊は姿を消してしまった。

 スセリの元へ近づいてシュンは聞いた。

「その感じだと、悪霊が見えたか」

「はい・・・。子供でした」

「やっぱりな。急いで戻って金山さんに報告だ。阿部、草薙館へ戻るぞ」

 シュンに言われてスセリは車に乗り込んだ。

 車の中でシュンは確信した。本当にスセリは昼間でも悪霊の姿をはっきりと見えていると。しかし、スセリがここまでの才能があるとは思わなかった。きっと何かのきっかけでこのように目が見えるようになったんだと。

「とりあえず草薙館に戻って報告だな」

 シュンはそう言って車を動かした。スセリは考えていた。まるであの悪霊は何かを探しているように感じた。スセリはそんなことを考えながら眠るのだった。



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