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Trigger〜悪霊浄化異聞〜  作者: 藤波真夏
悪魔の雄叫び編
15/130

来訪者〜Parson who knows information〜

来訪者〜Person who knows information〜



 三嶋フウマ。

 年齢二十四歳。職業、情報屋。

 カワグチとトウキョウを行き来して人をリークして情報を集め、または自ら赴いて情報を得る。ラフな格好でするっと相手に近づき、情報を聞き出す。見た目からは想像ができないほどの心を掴むプロフェッショナル。

 彼がここに来てから、この悪霊事件がゆっくりと動き出した。



「紹介しよう。彼は三嶋フウマくん。情報屋だ。彼はトウキョウとカワグチを行き来していて、悪霊関連の情報を提供してくれているいわば協力者だ」

 ヒジリは説明した。

 フウマはスセリにピースサインをしてアピールする。しかしスセリはヒジリの影に隠れている。フウマの馴れ馴れしい態度にスセリは不信感を募らせている。

「フウマ。うちの新人が怖がってんじゃないか。お前、女子に対する馴れ馴れしい態度やめたらどうだよ」

「いやだなあ、熱田さん。日々悪霊たちとバチバチしてる女子たちに対して敬意を払ってるんだよ? 勘違いしないでよ」

 ヨシキがため息をついて言う。そんなヨシキの言葉すらかわしてしまうフウマに飄々としていて本当に情報屋ぽいなとスセリは思ってしまう。

 ヒジリに促されてフウマは草薙館の中へ入っていった。通されたのは、作戦準備室ではなく二階のパブリックルームだ。

 スセリはヤタガラスのプライベート空間に入り込んでいることに驚いている。彼はそれだけヤタガラスが重宝していると実感できる。パブリックルームのキッチンではサトミがサンドイッチを作っていた。

「サトミちゃん!」

「三嶋さん?!」

 サトミが驚いていた。年齢的にはサトミの方が年上だ。しかしフウマはそんなサトミ相手でも「ちゃん」をつける。サトミは表情を変えてフウマに言った。

「どうぞ腰掛けてください。お茶を持ってきますから」

「やった! サトミちゃんのお茶が飲める!」

「スセリさん。一番苦いお茶のお茶っぱが棚にあるから出してくれない?」

「わかりました」

「サトミちゃん! 俺に対して手厳しくない?!」

 フウマは机の上に突っ伏した。

 サトミが入れたお茶を飲みながらフウマはヒジリやヨシキ、サトミとスセリたちに対峙する。

「君を呼んだのは他でもない。調べて欲しいことがあるんだ」

「なんですか?」

「昨日カワグチに不思議な悪霊が現れた。その悪霊は同時刻別の場所にいた。同じ時間帯に同じ魂で二つ存在する。魂が分裂することなどあり得ない。その根本について何か知っていないか?」

 ヒジリが言ったのは昨日の悪霊に関する情報の提供だ。

 フウマはそりゃ珍しいな、と言った。驚かないところが何度もヤタガラスに協力している風格を漂わせている。スセリはじっとフウマを見ていた。先ほどのフェミニストのような雰囲気は消えて一気に仕事人の顔になる。

 スセリがじーっと見つめていると、その視線にフウマが気づいた。するとその仕事人の顔は一気に元に戻る。

「どうしたの? 新人ちゃん。俺のことそんなに見つめて。もしかして、俺に惚れちゃった?」

 スセリはすぐに顔をそらす。すると、サトミの手がフウマの肩に乗せられた。フウマが見上げるとそこには笑いながらも怒気を漂わせているサトミがいた。

「これ以上スセリさんにちょっかいだすなら、あなたの首斬り落とすわよ?」

「サトミちゃん! そんな物騒なこと言わないでよ! ね?! ね?! 脇差をしまおうか?!」

 フウマは大慌てでサトミの機嫌を直そうとあたふたとしていた。

 フウマは冗談はこのくらいにして、と話題を元に戻す。

「確かにそいつはたちが悪い。ただ俺に時間をくれ。情報はおいそれと集まらない」

「いいだろう。ささいなことでもいい。何かわかったら知らせて欲しい」

 ヒジリはフウマの肩をポンと叩いた。

 フウマへの情報提供依頼をした後、スセリは作戦準備室にいた。息を吐いて昨日のことを思い出す。なぜ距離の離れた場所で同じ悪霊がいるのだろうか。謎が謎を呼ぶ。

「なんでこんなところにいるんだい?」

「っ?!」

 スセリが突如として声を掛けられたため、驚いて変な声を出してしまう。振り返るとそこにはフウマがいた。

「三嶋さん・・・。驚かさないでください」

「ボーっとしちゃって、どうしたの?」

「悪霊のこと考えてました」

 スセリがそう言うと、フウマは考えすぎだよとなだめた。

「まずは情報収集。闇雲に探したって有効な手立ては見つからないよ」

 確かにそうだとスセリは思った。正論を言われて言い返せなくて少し悔しいスセリもいる。するとフウマはここぞとばかりにスセリに聞いた。

「金山さんから聞いたぜ」

「何をですか?」

「君、例の未訓練なのに悪霊が見える新人ちゃんだって。俺もずっと気になってたんだ」

 フウマはスセリに聞いた。

 スセリが身を固くしているとフウマは取って食ったりしないよ、と笑う。フウマは少し得意げに話す。

「新人ちゃんのことは他の浄化師たちの間でも有名なんだよ。一般人だった普通の女の子が未訓練にも関わらず悪霊が見えて、スカウトされて浄化師になったってね。しかも悪霊対策部の浄化師認定テストでは全治数カ月の大怪我を負いながら悪霊を浄化したってね」

「どこまで知っているんですか・・・」

 スセリはあきれ顔だ。

 これではスセリの情報が漏洩されているのと同じである。未訓練にも関わらず悪霊対策部から正式な浄化師と認められたのは異例中の異例なのであろう。スセリのことが知れ渡るのは必然のことだった。

 スセリの現状における過程は異常であることを思い知らされる。

 するとフウマはスセリに言った。

「この仕事は体力勝負だけじゃなくて、意外と命のやり取りをする場合があるからな。命あっての物種だ。忘れちゃダメだよ」

「・・・わかっています」

 スセリはそう言った。

 スセリは一度九死に一生の大怪我を負っている。スセリは身をもって実感している。

「じゃ、俺はこれで。頑張ってね。新人ちゃん」

 フウマはスセリに手を振った。スセリは軽く会釈をしてフウマを見送った。

 草薙館を出たフウマは振り返る。


 未訓練にも関わらず浄化師になった人間。どんな子だろうと思ったけど、普通の女の子だ。でも見た目は大人、心はどこか子供のようにも見える。そして、俺の言葉にもなびかない。あの新人ちゃんはきっと、大丈夫だろう。


 フウマはそう思った。

 フウマが戻った後、スセリたちはヒジリに呼び出されて作戦準備室へやってきた。一列に並んでいるとヒジリが言った。

「カワグチに出没している二つの悪霊に関しては現在三嶋くんに情報を集めてもらう依頼をした。二つの悪霊に関しては情報が少ない中で闇雲にやると死傷者が出かねない。俺たちはいつも通りに仕事をする。そして悪霊浄化の中で遭遇したらできるだけ情報を集めるんだ。いいね?」

「ラジャ!」

 全員が返事した直後だった。

 悪霊の緊急通報のサイレンだった。サイレンにも驚いたが、驚いたのは時間帯だ。電話を取ったのはスセリだった。

「はい、こちら日本御霊浄化組合です!」

 スセリが通報内容を聞きながらメモに詳細を残していく。通報を聞き終わったスセリは電話を切り言った。

「悪霊の目撃情報です。場所はシンゴウ地区。シンゴウ地区のシンゴウ国際図書館付近で黒い靄を見たそうです!」

 それを聞いたヨシキたちは首をひねる。

 それもそのはず。悪霊が活発になるのは夜だ。昼も動くが太陽の下にはなかなか出てこない。昼間の通報は怪しさでしかない。もしかしたらいたずらかもしれない。そのくらいのレベルだ。

「デマかもしれん。しかし、今謎の悪霊が跋扈している以上、赴かなければいけない。立石。阿部。行けるかい?」

「もちろんです」

「任せてください!」

 ヒジリはスセリとミホに行くように言った。スセリは通信装置を取り付けて準備を整える。

 そして緊急であるため、金山の運転する車に乗ってシンゴウ地区を目指す。

 本来であれば救急車やパトカーなどの緊急車両をヤタガラスも装備しているが、人手不足で運転できる人材が少ない。ヤタガラスの中で自動車の運転免許を持っているのは、ヒジリ、ヨシキ、シュン、サトミの四人。スセリとミホは持っていない。

 そのため、運転はその時の持ち回りで行っている。

 ヒジリはミホとスセリを車に乗せて、サトミを呼んで言った。

「二人を送った後は俺もシンゴウ地区で待機している。留守は任せたぞ」

「はい」

 サトミに見送られ、車は動き出した。



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