小心翼翼
庄司あかりはごく普通の内気な人である。毎日言いたいことが言えず、毎日自分の弱さに凹む、齢20の内気な人である。今日も今日とて、30アイスで注文ができずにすごすごと列を離れたあと、行きつけのコンビニでバニラカップアイスを買って家路についていた―――のだが。
キュ―――キュキュ!!キ――――イイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。庄司あかりの魂と、女神が対面している。
「庄司あかりさん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
庄司あかり(20)
レベル6
称号:転生者
保有スキル:小心翼翼
HP:12
MP:10
「というわけで、いきなり草原に放り出ッ…!!」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が内気な人の前に現れた!
「…!スライムっ?!武器も何もッ…!!」
うろたえる、内気な人。
「っ!保有スキル!小心翼翼って、何?何?わ、わかんなっ…!!!」
スライムは、今にも襲い掛かろうとしている!
「ごっ!!ごめっ!!あ、あの、そ、そのっ、わた私っ…!」
スライムは、真っ赤な顔をしてテンパって涙を浮かべている内気な人に同情した!落ち着くまで待ってあげないとだめだ!!ただ黙って様子を見ていたスライムを見て、内気な人は平常心を取り戻した。
「わた、私は食べても、美味しくないですよ…」
味は関係ないから大丈夫!スライムは内気な人を丸呑みした。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
内気な人は時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
内気な人はコンビニでバニラカップアイスを買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「あと少々早く通りかかってたらひかれてた…。」
内気な人は、言いたいことが言えないのが幸いして上司の進めるお見合いをすることになり、案の定断ることができずに結婚することになり、子供が生まれてからはPTA役員になり、町内会役員になり、人前に出ることが嫌で嫌で仕方がなかったはずなのにいつの間にか人前に出るのが当たり前になってしまって相当心身を病んだあと60歳の時大勢の知人の見守る中で息を引き取ったとのことです。




