長男
石掛亮はごく普通のおにいちゃんである。毎日妹の話を聞き、毎日弟とボール遊びをする、齢11のおにいちゃんである。今日も今日とて、弟のおむつを替えた後、近所のコンビニで妹と遊ぶためにシャボン玉と風船を買って家路についていた―――のだが。
ギュイッ!!キュキキキキキイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。石掛亮の魂と、女神が対面している。
「石掛亮さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
石掛亮(11)
レベル10
称号:転生者
保有スキル:長男
HP:10
MP:8
「というわけで、いきなり草原に放り出されて、ええっと…。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がおにいちゃんの前に現れた!
「え?!スライムじゃないの?!武器も何もないよ…どうしよう…。」
うろたえる、おにいちゃん。
「あっ!そっか、保有スキル!これ使える?!長男って何?!長男だけどさ!!意味わかんないよ!」
うばほん!!!
お兄ちゃんの前に、いつも妹弟たちと一緒に遊んでいるおもちゃ箱が現れた!スライムは、興味津々だ!!
「え、何、遊んでほしいの?絵本読む?ボール?けん玉もあるし、パズルもあるよ?おやつ先に食べる?」
お兄ちゃんはおやつのミルクせんべいをスライムに分けてあげた後、絵本を読んであげた。スライムは大喜びだ!おにいちゃん大好き!!!
「次はボール遊びしようか、投げるから、返してね?いくよ?」
スライムはお兄ちゃんの投げたボールを投げ返した!
「ぎゃあああああああああああ!!!!」
お兄ちゃんは、ボールに付着したスライムの体表の毒液が両掌についてしまい、絶命した。スライムは大好きなおにいちゃんともう遊べないと思ったら涙が出てきたけど、しっかり捕食した。
「う、うーん???あれ??」
おにいちゃんは時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
おにいちゃんは行きつけのコンビニで妹と遊ぶためにシャボン玉と風船を買った後家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「あとちょっと早く通りかかってたらひかれてたかも?ゆーちゃんもかー君もさっちゃんもしゅう君も待ってるから早く帰ろ!」
おにいちゃんは、三人の妹と二人の弟の世話を嬉々としてつづけ、一緒に遊ぶことに夢中になった結果あまり勉強に力が入らず学力を身につけることができなかったのですが、妹と弟たちはおにいちゃんが勉強を見ていてくれる安心感から学習能力が高まってずいぶん学力を身につけることになり少し理不尽さを感じたものの、小さい子供と触れ合う機会が多かったからか保育士としての才能が花開き、数多くの子供たちの成長を見守り続けて81歳でこの世を去ったという事です。




