どうせ僕なんて
川西英二はごく普通のヘタレである。毎日くよくよして、毎日言いたいことが言えない、齢25のヘタレである。今日も今日とて、あの時ああいっとけば良かったのにな、あああ…!と後悔した後、行きつけのコンビニで就職情報誌と競馬ブッツを買って家路についていた―――のだが。
ギュキュキキ―――ッ!キイイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。川西英二の魂と、女神が対面している。
「川西英二さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
川西英二(25)
レベル6
称号:転生者
保有スキル:どうせ僕なんて
HP:3
MP:18
「というわけで、いきなり草原に放り出すんですね、酷いですね、僕だからこれでいいやって思ったんでしょう…?」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がヘタレの前に現れた!
「あああ!スライムまで出てきたよ!なんか結局、僕ってこの程度なんだよね、はは、あはははは…。」
うろたえる、ヘタレ。
「保有スキル…どうせ僕なんて?ああ、そうだね、どうせ僕なんてすぐに食われてしまって一巻の終わりだよ、食ってもどうせ美味くないけどね、でも食うんでしょう?はは、ご丁寧なことで。骨まで食ったところで僕なんかうんこにもならないくらい意味がない存在なんですよ、こんなの食う勇気あるんですか?ないでしょう、そうなんですよ、僕なんて結局ね、はは、あはははは!!!」
スライムは恐れ戦いた!!何この人、ちょー怖い。スライムは逃げ出した!
ずささささ!!
スライムは回り込まれてしまった!
「ねえねえ!!なんで逃げるんですか、そんなに僕って情けないですか、捕食対象にすらなりませんか、そうですかそうですか、ねえあなた、僕はどうしたらいいと思います?何やってもヘタレ扱いされた挙句にこんな世界に飛ばされて、誰からも必要とされずにここでのたれ死んで土に帰って、ああ、土すらも僕を拒むかもしれませんね、ほれ、僕を食ってみろ!!土すら拒むこの僕おおおおお!!!」
ぱくり。
わーすか言ったところでこいつはただの食料だったという事に気が付いたスライムは、ヘタレを捕食した。三日後にちゃんとうんこは出たらしい。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
ヘタレは時間を巻き戻されて、コンビニの入り口に立っていた。コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
ヘタレはコンビニで就職情報誌と競馬ブッツを買ってから帰路に就いた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もう少し早く通りかかってたらあの車を汚すことになっちゃってたよね、はあ、良かった…。」
ヘタレは、毎日つまらない事でいつも凹んで周りにクソ重たい空気を振りまいていましたが、実はけっこう顔が良かったため一目惚れしてくれた能天気な女子に四六時中褒め殺されるようになり、いつしか勘違い自信過剰野郎へと進化したのちおかしなナルシスト野郎に最終進化して、見た目はまあまあ美しい他人嫌いの自分大好き爺さんとして名をはせ、69歳でこの世を去ったという事です。




