相撲訓
富士稲妻はごく普通の力士である。毎日ちゃんこを食べ、毎日股割をする、齢26の力士である。今日も今日とて、朝稽古の後、行きつけのコンビニでイチゴチョコと週刊少年ヨンダーを買って帰路についていた―――のだが。
キュキュキイッ!!キキキィィィィイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。富士稲妻の魂と、女神が対面している。
「富士稲妻さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
富士稲妻/中村騎士(26)
レベル30
称号:転生者
保有スキル:相撲訓
HP:206
MP:15
「というわけで、いきなり草原に放り出す、ほう…。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が力士の前に現れた!
「お!スライムというやつかな?武器はないが…この身で、戦うべきか…?」
うろたえない、力士。
「保有スキルの相撲訓…つまりは、このものと勝負をすべしという事か…。土俵を用意せねばなるまい。」
うばほん!!!
草原に土俵が現れた!スライムは力士の姿に変化した!!なかなかのアンコ型だ!!強敵に違いない!!
力士とスライムは、土俵に塩をまいて、にらみ合う!!立ち合いからの――――!!ゴツン!!激しいぶつかり合い!!
「ぐぅっ…!!!」
力士は右四つに組んだ後、土俵際まで追い込んで、力強くスライムをうっちゃった!力士は手刀を切った後土俵をおり、そのあとスライムの毒が回って絶命した。見事なまでの横綱相撲だったというのに、体表の毒で力士の命を奪ってしまった己のずるさに打ちのめされたスライムは、半泣きになりながら力士を捕食したという。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
力士は時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
力士はコンビニでイチゴチョコと週刊少年ヨンダーを買って帰路についた。自宅近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もう少し早く通りかかってたら夏場所に間に合わなくなるところだったかも知れん、気を付けよう。」
力士は、十両まではとんとん拍子で行ったものの、そこからなかなか三役まで上がることができず年を重ねましたが、毎日真面目に稽古に取り組みちゃんこをしっかり食べて体を作った結果徐々に頭角を現し金星を何度か挙げることとなり人気を博し、小結に昇進した年にひざの故障で引退したあとは親方となって数多くの名力士を育て上げ70歳でこの世を去ったという事です。




