母性本能
伊東佐和はごく普通のおかあさんである。毎日子供の連絡帳を確認し、毎日おいしい晩御飯を作る、齢35のおかあさんである。今日も今日とて、洗濯物を干した後、行きつけのコンビニで子供が欲しがっていたアニメキャラのプリントサービスコンテンツを出力して家路についていた―――のだが。
キュキキイッ!!キ―イイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。伊東佐和の魂と、女神が対面している。
「伊東佐和さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
伊東佐和(35)
レベル21
称号:転生者
保有スキル:母性本能
HP:25
MP:11
「というわけで、いきなり草原に放り出すの、なんでこういうことするの…?」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がおかあさんの前に現れた!
「はあああ?!スライムだよね?!武器も何もないよっ!ねえ、ねえねえ、ちょっとぉおおおお!!」
うろたえる、おかあさん。
「そーだ!保有スキル!ええっと、母性本能って?!何これ、持ってるだけで影響出るやつ?」
スライムは、今にも襲い掛かろうとしている!はッ!!よく見るとスライムの膝小僧から血が出ている!かわいそう!!!
「ちょっとあなた!血が出てるじゃないの!消毒してばんそうこう貼るから!!ちょっとこっちに来なさい!」
スライムは恐る恐るお母さんに近づいた。お母さんの手に、消毒液と大きめの絆創膏が出てきた!
「ごめんね、ちょっとしみるけど、消毒しないともっと痛くなっちゃうからね…。」
スライムはお母さんの消毒がちょっとしみるけど、我慢している!
「はい、じゃあこのばんそうこう貼って、おしまい!」
ばっちーん!
お母さんはばんそうこうを貼って最後に豪快にバチンとスライムの膝を叩いた!
「ぎゃああああああああ!!!」
スライムの膝表面の猛毒がとびちり、お母さんの手の平と顔、その他もろもろについてしまい、全身に毒が回って絶命してしまった。なんで傷の上なのに叩いちゃったの?と、スライムは悲しくなってしまったという。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
おかあさんは時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まった前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
新入社員は行きつけのコンビニで子供が欲しがっていたアニメキャラのプリントサービスコンテンツを出力して家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「あとちょっと早く通りかかってたらご飯の用意できなくなってたかも…怖いなあ、気を付けないとねえ。」
おかあさんは、ずいぶん内気な息子をずいぶん心配していましたがぐんぐん大きくなってどんどん頼もしく育っていったので一安心していたところ、ずいぶんやんちゃな娘がずいぶんやらかして疲労辟易しつつも孫の世話に明け暮れる自分も幸せだよねと思って毎日楽しく生活を送ったのち、75歳でひ孫が生まれた翌日にこの世を去ったという事です。




