天下無敵
高倉信一郎はごく普通の成功者である。毎日資産の運用について思案に暮れ、毎日新しい事業に手を伸ばす、齢48の成功者である。今日も今日とて、株主総会に出席した後、電話がかかってきたのでコンビニ駐車場に車を停めて話し込んでいた―――のだが。
ギギュ―――イッ!!キッイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。高倉信一郎の魂と、女神が対面している。
「高倉信一郎さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
高倉信一郎(48)
レベル62
称号:転生者
保有スキル:天下無敵
HP:50
MP:68
「というわけで、いきなり草原に放り出されてしまったわけだが。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が成功者の前に現れた!
「スライム…ね。武器も何もない状況から、何をどうなすべきか。」
うろたえない、成功者。
「保有スキルというのはどういうものなんだ?天下無敵?そんなに私は、強くないよ?」
スライムは怯えている。なんという不敵な笑みを浮べるやつなんだ。何かあるに違いない。
「やれることをやれる力を出し切ってやってきた、ただそれだけなんだよ。君は何をして生きてきたんだい?生きてきたからこそ君と私は対面した、そこに意味があるんだよ。ともに何ができるのか、共に模索しようじゃないか。」
成功者は握手を求めた。スライムは、この人とだったら何かを起こせそうな気がした!喜んで握手を交わす!!
「ぎゃあああああああああああ!!!」
案の定、成功者は手から毒が回ってしまい絶命した。なんという世界的損失!でもまあ仕方ないかとスライムは開き直って成功者を捕食した。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
成功者は時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
成功者は電話がかかってきたのでコンビニ駐車場に車を停めて話し込んでいたが応対はすぐに終わった。コンビニの駐車場を出た時、車の暴走事故が発生していた。
「もう少し時間がかかってたら私の車がおじゃんになってたかもなあ…。」
成功者は、資産運用でいろいろと手を出すたびに不成功者からの絶賛と批判を浴び続けましたが特に気にすることなく我が道を行き、損失があった時も慌てず自らの力で補填をし続け一つの時代を作り上げましたが、いつしか記憶の忘却という魔の手が迫り75歳でこの世を去るときには自分の名前すらもわからなくなっていたという事です。




