怠惰の王
浜田正文はごく普通のやる気のない人である。毎日ごろごろして、毎日宝くじ当たんねぇかなと考える、齢32のやる気のない人である。今日も今日とて、足の踏み場のない部屋のど真ん中でホコリまみれになりながらゴロゴロした後、行きつけのコンビニでカツカレーとライフバードを買って家路についていた―――のだが。
キュキキ―――ッ!キイイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。浜田正文の魂と、女神が対面している。
「浜田正文さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
浜田正文(32)
レベル2
称号:転生者
保有スキル:怠惰の王
HP:40
MP:2
「というわけで、いきなり草原に放り出されるとかさあ…めんどくせ…。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がやる気のない人の前に現れた!
「ふーん、スライムね。はーあ、めんどくせえなあ…。」
うろたえない、やる気のない人。
「保有スキル?怠惰の王ね。なんもしなけりゃ、勝ち、みたいな?」
スライムは様子を見ている!こいつなんかする?なんかする?ドキドキドキドキ…。
「なんもしねえよ。めんどくせえからな。」
やる気のない人は、草原で寝っ転がってゴロゴロし始めた。そのうちいびきをかいて眠ってしまったやる気のない人を見て、スライムはありがたく捕食させていただくことにしたが、かじったとたんに大暴れし始めたので、なんだこいつ往生際は悪いんだなと思いつつゆっくり咀嚼して完食したらしい。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
やる気のない人は時間を巻き戻されて、コンビニの入り口に立っていた。コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
やる気のない人はコンビニでカツカレーとライフバードを買ってから帰路に就いた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「あと少し早く通りかかってたらひかれてあの世行きだったと。」
やる気のない人は、弟に無理やり連れだされたときに買った宝くじが当たったものの換金に行くのがめんどくさくてそのままほったらかしにしてしまい、あわてて換金期限の前日に銀行に行ったところ窓口が閉まっていたので入り口を開けろと騒いで警察沙汰になったあげく、結局一円も手に入らない事になり自分の怠惰な生活を悔やみ続けて55歳の時に内臓を悪くして寿命を終えたとのことです。




