レクリエーション
鈴畑伊織はごく普通の介護士である。毎日入所者と散歩に行き、毎日入所者に感謝の言葉をもらう、齢38の介護士である。今日も今日とて、入所日誌を付けた後、行きつけのコンビニでミルク石鹸と歯磨き粉を買って家路についていた―――のだが。
キュキイ!!キ――――イイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。鈴畑伊織の魂と、女神が対面している。
「鈴畑伊織さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
鈴畑伊織(38)
レベル45
称号:転生者
保有スキル:レクリエーション
HP:30
MP:20
「というわけで、いきなり草原に放り出すんだね、強気だなあ…。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が介護士の前に現れた!
「おはっ!スライムだよ?!武器も何もないんだけど、こいつ強いんかな?」
うろたえる、介護士。
「ああ、保有スキル試してみればいける?レクリエーションって、何を!!」
うばほん!!!
介護士の前に、いつも使っているお手玉とホワイトボードが現れた!ホワイトボードには、的がいくつか書かれている!
「はい、じゃあ、今日は、このボードにかかれた的に、お手玉を当てるゲームをします!当たったら景品が出ますよ!はい、一人玉五個ね、頑張って!」
スライムはお手玉を五個受け取った!びし!ばし!ぼし!ばん!すかっ!
「ああー残念でした、全部で29点、30点いかなかったので景品は出ませんね。」
スライムは激昂した!あと一点なんだからおまけしてくれてもいいじゃん!怒りに任せてスライムは介護士を丸呑みした。丸呑みにされながら、介護士が最後に思ったのは、あと一点足りなかったからもう一回チャレンジしましょうっていうつもりだったのにー!だった。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
介護士は時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
介護士はコンビニでミルク石鹸と歯磨き粉を買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「うわぁ!もうちょっと早く通りかかってたら夜勤誰もいなくなるとこだったよ…怖い怖い。。」
介護士は、収容人数の多すぎる施設で誠意的に介護にあたっていたのですが、自分の家族を融通してくれないと言い張る利用者が施設を名指しで批判したことがきっかけで職場を失ってしまい、ずいぶんたくさんの施設に勤務したのち同じような境遇の仲間に出会い施設運営に乗り出し、その施設で82歳の寿命を迎えたという事です。




