他力本願
中村陽大はごく普通の新入社員である。毎日先輩に指導してもらい、毎日いつかはいい仕事してやるぞと目論む齢22の新入社員である。今日も今日とて、先輩のお叱りを受けた後、行きつけのコンビニでごってりもりコーン味噌ラーメンとウメッチュを買って家路についていた―――のだが。
キキイッ!!キ―イイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。中村陽大の魂と、女神が対面している。
「中村陽大さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
中村陽大(22)
レベル15
称号:転生者
保有スキル:他力本願
HP:32
MP:10
「というわけで、いきなり草原に放り出されて、しまいましたねえ…。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が新入社員の前に現れた!
「はい?!スライムってあわわ!!!武器も何もないけれどもっ!この場合の第一選択っ!!」
うろたえる、新入社員。
「はっ!保有スキルがありますね、これを試してみない手はないのですがって、他力本願んん?!」
うばほん!!!
なにやらベテランっぽい社員が現れた!これは先輩社員なのか?スライムと戦っているぞ!!これはすごい!!
「ちょっ…!!他力本願って、人に頼って自分は何もしないってこと?!そんなんダメでしょ!!みんなでいろいろと協力し合って仕事は達成するものであって!!ああっ!そんな素手でスライムと対峙してっ!!ボ、僕も一緒に戦いますからっ!!」
新入社員は勝手な思い込みでスライムと戦っている先輩社員もどきのもとに飛び込んで行った!
「ぎゃあああああああああああ!!!!」
新入社員はスライムの毒が回って絶命した。戦っていた先輩もスウと消えた。先輩社員もどきは、消える前に戦い方もろくに知らないのに勝手に行動するなんてこいつの上司はいったい何教えんだと思ったらしい。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
新入社員は時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まった前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
新入社員は行きつけのコンビニでごってりもりコーン味噌ラーメンとウメッチュを買った後家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もう少し早く通りかかってたら新入社員のまま人生終えてたな、いやだいやだ、早く出世したいもんだ。」
新入社員は、ずいぶん先輩に絞られてずいぶん凹んでずいぶん恨みを募らせたものの、自分が先輩になった時にずいぶん先輩に感謝をして、精一杯お返しをして、共に会社を盛り上げて定年まで勤め上げ、時折辛かった新入社員時代を子供や孫に聞かせながら昔を懐かしむ毎日を送ったのち80歳でこの世を去ったという事です。




