舌先三寸
今井蒼はごく普通のええかっこしいである。毎日くさいセリフを考え、毎日女子をドン引きさせる、齢24のええかっこしいである。今日も今日とて、ナンパに失敗した後、行きつけのコンビニで避妊具と男性用コロンを買って家路についていた―――のだが。
ギ―――イッ!!キッイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。今井蒼の魂と、女神が対面している。
「今井蒼さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
今井蒼(24)
レベル12
称号:転生者
保有スキル:舌先三寸
HP:26
MP:1
「というわけで、いきなり草原に放り出すとかへえ、女神さまも、粋なことをしなさる。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がええかっこしいの前に現れた!
「なるほど、スライム…ね。武器も何もないけれども。僕ならば、勝てる、と。」
うろたえない、ええかっこしい。
「保有スキルは…舌先三寸ね。ああ、ぴったりだとも、この僕に。フフフ…。」
スライムは怯えている。なんだこいつのこの変な自信は。何かあるに違いない。
「君は今、僕と対峙することによって恐怖心を芽生えさせている、そうだろう?ああ、そうに違いない。なぜなら僕は君の怯える姿を見て、これほどまでに自分の勝利を確信してしまっているからだよ!!ごらん?今僕の手が震えているだろう?これはね、武者震いっていうんだよ?君の震えはただの怯えさ。どうだい、君は敗者だ!さあ!遠慮せずにこの場を立ち去りたま・・・」
ええかっこしいは魔力枯渇で倒れた!スライムははっと我に返った!なんだこいつは。食っちまえ、パク―。ええかっこしいはスライムに捕食された。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
ええかっこしいは時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
ええかっこしいは行きつけのコンビニで避妊具と男性用コロンを買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「…僕の命を奪うには、少々、性急すぎるきらいがあったようだね。」
ええかっこしいは、常にクサいセリフを決めにかかっているのでずいぶん敬遠されていたのですが、あるとき不意を突かれてちょー苦手なネズミを目の前に見せられて「ひぎゃあ!!そのネズ公をおらのめぇからとっとともっちっちくんねばはががががが!!」と叫んでしまって以降ずいぶん親しみがわいてそれなりに仲良しが増え、時折病気にかかったかのように凍り付くセリフを吐きつつも家族に恵まれ、娘の結婚式で号泣の末一言もセリフが言えなかったことを笑われ続けて78歳でこの世を去ったという事です。




