交通安全
平加緒里はごく普通の学童擁護員である。毎日黄色い旗を振り、毎日子供たちの通学を安全に導いている、齢50の学童擁護員である。今日も今日とて、子供たちの帰宅を見届けた後、行きつけのコンビニでクレンジングシートとクリームソーダを買って家路についていた―――のだが。
キキイッ!!キキキキキイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。平加緒里の魂と、女神が対面している。
「平加緒里さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
平加緒里(50)
レベル1
称号:転生者
保有スキル:交通安全
HP:16
MP:10
「というわけで、いきなり草原に放り出すのかい!どういう不親切な人だろうね!まったく!!」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が学童擁護員の前に現れた!
「はあ?!スライム?!武器も何もないってのに!どうすんじゃああああああああ!!!」
うろたえる、学童擁護員。
「ああ、はいはい!保有スキル!?これ使えるんじゃないのかね?!交通安全?!」
うばほん!!!
学童擁護員の手に、いつも持っている黄色い交通安全通行中の旗が現れた!目の前には片側二車線の交差点が現れた!スライムは、今にも襲い掛かろうとしている!
「はいはい!!ダメダメ!!信号が赤だよ!!待っててね!!」
スライムは早く向こう側に渡りたくて仕方がない!!ああっ!!赤信号を無視して飛び出してしまった!
「危ない!!ぎゃああああああああああああああ!!!」
学童擁護員は、赤信号で飛び出したスライムをかばって、突進してきたマンティコアに跳ねられてしまった。息も絶え絶えだ!!交差点の真ん中で、ケガ一つないスライムを確認した学童擁護員は、満足そうにつぶやいた。
「信号を、無視しちゃ、いけない、よ…ぐふっ…。」
スライムは大変なことをしてしまったと反省して、学童擁護員に手を合わせた後捕食した。
「う、うーん???あれ??」
学童擁護員は時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
学童擁護員は行きつけのコンビニでクレンジングシートとクリームソーダを買った後家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「あとちょこっと早く通りかかってたらひかれてたじゃないの!まったく交通安全もありゃしない!」
学童擁護員は、毎日子供たちの通学と帰宅を見守り続けていたある日、市の方針で子供たちの交通安全はPTAで守る事になったからもう来なくていいよと言われてしまい、どういうことかと憤慨したのち交通指導員になったりスクールガードリーダーになったりしながら最終的に交通安全ボランティアをしたのち72歳でこの世を去ったという事です。




