休んでいく?
小林すみれはごく普通の保健室の先生である。毎日ほけん便りの内容を考え、毎日けがをした子供にばんそうこうを渡す、齢26の保健室の先生である。今日も今日とて、子供保健委員会のミーティングに出席した後、行きつけのコンビニで赤ペンと天然水を買って家路についていた―――のだが。
キキ―――ッ!キイイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。小林すみれの魂と、女神が対面している。
「小林すみれさん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
小林すみれ(26)
レベル6
称号:転生者
保有スキル:休んでいく?
HP:30
MP:28
「というわけで、いきなり草原に放り出されちゃったじゃないの!どういうことよこれ。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が保健室の先生の前に現れた!
「ほへ?!スライムぅ?!武器も何もないってのに、どおすんのよぉおおおお!!!」
うろたえる、保健室の先生。
「そ、そそそうだっ!保有スキル!たっ、ためためっ・・・休んで、いくぅうううう?」
うばほん!!!
保健室のベッドが二つ出てきた!…よく見るとスライムの顔色が悪い!これは休ませて親御さんに電話をせねば!!!
「顔色悪いからちゃんとベッドに入って休んでいなさい、お母さんに来てもらう?」
スライムに、迎えに来てくれるお母さんなど…いないっ!!!スライムは悲しくなって、泣き出してしまった!!
「うん、ここでずっと休んでていいからね…?・・・ぎゃああああああああ!!!!」
保健の先生は、スライムを慰めようと思って頭を撫でたが、その瞬間体表の猛毒が回ってしまって絶命した。極力生徒に触れてはならないという通達が出ていたというのに…。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
保健室の先生は時間を巻き戻されて、コンビニの入り口に立っていた。コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
保健室の先生はコンビニで赤ペンと天然水を買ってから帰路に就いた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「あと少し早く通りかかってたらひかれてたよね?…恐ろしい、気を付けておかないと、うん。」
保健室の先生は、毎日生徒の健康を見守りつつ子供たちの心のケアに尽力し、ずいぶん多くの傷ついた子を助けたのち大人になった子供たちにも寄り添って、その後老人になった子供たちにも寄り添い続け、86歳の人生を終えたという事です。




