ちょっと考えておきますね
畑原守彦はごく普通のPTA会長である。毎日学校イベントのことを考え、毎日役員仲間の愚痴ラインをスルーする、齢40のPTA会長である。今日も今日とて、PTA総会を終えた後、行きつけのコンビニで240枚のコピーを取って帰路についていた―――のだが。
ギイキキイッ!!キキキィィィィイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。畑原守彦の魂と、女神が対面している。
「畑原守彦さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はい。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
畑原守彦(40)
レベル23
称号:転生者
保有スキル:ちょっと考えておきますね
HP:26
MP:30
「というわけで、いきなり草原に放り出された…か。…。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がPTA会長の前に現れた!
「おっ!スライム?武器も何も持っていない俺の前に現れるのか、へえ…。」
うろたえる、PTA会長。
「あ、保有スキル使ってみるか?試すも何も、ちょっと考えておきますねって…。」
スライムは、戸惑っている!
「君が僕を襲いたいと思うのはわかりますよ、でもね、それでは困ってしまうんです、僕がね。申し訳ないんですけど、この件に関しましてはちょっと考えさせていただきたいので、そのままお待ちください。」
スライムはPTA会長が考え終わるのを待っている!
「よーし、この隙にすたこらさっさだー!」
逃げ出したPTA会長を見てスライムは激怒した!問題から逃げ出すとは何事だ!!それでも保護者の代表かああああ!!!スライムはPTA会長を頭からぼりぼりと捕食した。舌触りの柔らかそうな見た目をしていたが、骨ばってとげとげしていて非常に腹立たしいのどごしだったという。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
PTA会長は時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
PTA会長はコンビニで240枚のコピーを取って帰路についた。自宅近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もう少し早く通りかかっていたら、次の役員決めできなくなるとこだったよ。」
PTA会長は、子供が小学二年生の時に軽い気持ちで引き受けたPTA役員だったのに子供が成人してもやる人がいないからお願いできませんかという言葉をかわすことができず、言動が怪しくなってきた70歳で市P連を引退するまで精力的に活動していましたが、その頃には蔑ろにされてきた家族は出て行ってしまった後だったため、75歳で人生を終える頃には相当孤独な生活をしていたという事です。




