ステップ
ウンディーネはごく普通のダンサーである。毎日レッスンをし、毎日舞う、齢25のダンサーである。今日も今日とて、子供ダンス教室のレッスン後、行きつけのコンビニで髪ゴムとボカリスイッツを買って家路についていた―――のだが。
キキ――――イッ!!キ―イイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。ウンディーネの魂と、女神が対面している。
「ウンディーネさん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
ウンディーネ/梅原ささみ(25)
レベル13
称号:転生者
保有スキル:ステップ
HP:32
MP:10
「というわけで、いきなり草原に放り出すぅ?ふつう?!もうちょっとなんとかないいないの!!」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がダンサーの前に現れた!
「はぁ…?!スライムってちょっと!!!武器も何もないよ?!ばかなの、ねえばかなんでしょぉおおおお!!」
うろたえる、ダンサー。
「そういえば、試してないね、保有スキル…ステップ?どのステップの事、だあああああ!!!スタジオもないのに、華麗にステップが踏めるかあああ!!!」
うばほん!!!
スライムは平べったくなって滑りにくくて足首にやさしい、フローリングっぽいスタジオ床に変化した!
「はい!まずは基本のボックスから―!はいワンツースリっフォーファイシッセブエイ!!」
スライムに8のダメージ!!効いているぞ!!
「ポップコーンにランニングマン!!ツーステップ、パドブレ!!」
スライムにどんどんダメージが蓄積されていく!!あと少しでとどめを刺せそうだ!!!
「ルーズレッグにクロスステップ!スクービードゥーとスキーターラビット、最後はターンで決めるっ!!」
てれれてっててーーー!!!レベルが上がった!ダンサーはレベルが20になった!
ターンを決める前に、スタジオ化していたスライムが溶解し始めた!ステップを踏むことに夢中になっているダンサーはそれに気が付かない!
「ぎゃあああああああああああ!!!!」
ダンサーは溶け始めたスタジオの床の毒が皮膚に付着し絶命した。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
ダンサーは時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まった前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
ダンサーは行きつけのコンビニで髪ゴムとボカリスイッツを買った後家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もう少し早く通りかかってたら来月のコンテストに出られなかったかも、こーわー。」
ダンサーは、子供たちにレッスンを行いながらオリジナルステップの研究に精を出し、激しいシェイキングと淫靡な腰の揺れが見事にマッチングした華麗な舞を発表してエロダンサーの名をほしいままにしたのち、50を過ぎたあたりから社交ダンスにシフトチェンジしたもののいつまでたっても動きがエロいという評価が付きまとってしまい、80歳でこの世を去る寸前まで恥ずかしさに頬を染めていたとのことです。




