整体
木田幸次はごく普通の整体師である。毎日ボキボキ音を鳴らして、毎日施術台の消毒をする、齢32の整体師である。今日も今日とて、整体院の営業を終えた後、行きつけのコンビニで五枚入りマスクとフライドチキンを買った後家路についていた―――のだが。
キキキッ!!キッキイイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。木田幸次の魂と、女神が対面している。
「木田幸次さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
木田幸次(32)
レベル15
称号:転生者
保有スキル:整体
HP:20
MP:20
「というわけで、いきなり草原に放り出されたぞ…おお…。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がコンビニ店員の前に現れた!
「うわ!スライム!!武器も何もないけど戦わないとだめなんだろうか?」
うろたえる、整体師。
「そうだ!試してみるか?保有スキル!!整体っておい!人型じゃなきゃなんもできんわ!!!」
うばほん!!!
スライムは人型に変化した!ちゃんと施術着に着替えているぞ!全年齢版でも大丈夫だ!
「じゃあ、こちらにうつぶせになってください、ちょっとまず全体を見ますね…」
いつの間にか出現していた施術台にスライムはうつぶせになって乗った。整体師の手が、スライムの背中を心地良く圧迫する。…なんという至福!!
「うーん、背骨が無いから整体の必要ないですね、また来てください。」
人型になったらやってくれるんじゃなかったんかい!!スライムは激昂した!スライムは施術台を消毒し始めた整体師を丸のみした。施術台は草原にポツンと残されていたが、長い年月を経て朽ちて土に混じったらしい。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
整体師は時間を巻き戻されて、コンビニの入り口に立っていた。コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
整体師はコンビニで五枚入りマスクとフライドチキンを買ってから帰路に就いた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もう少し早く通りかかっていたらひかれてたかもしれないな…こわいなあ、ううむ。」
整体師は、毎日体のゆがみきった人たちのケアに努めていましたが、ある時性格のゆがみきった人がいろいろと言いがかりをつけてきて警察沙汰になり、泣く泣く整体院を閉めることになってからは出張タイプの施術院にシフトチェンジし、移動が厳しくなった高齢者の皆さんに相当利用していただいた後はのんびり余生を過ごして98歳でこの世を去ったという事です。




