なでなで
茨木百合華はごく普通の女子高生である。毎日高校に行って、毎日お弁当を食べる、齢17の女子高生である。今日も今日とて、高校帰りに、行きつけのコンビニでフェイスパック一枚とメロンスムージーを買って家路についていた―――のだが。
キキィイイイイイ!!キイイイイイイイイイイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。茨木百合華の魂と、女神が対面している。
「茨木百合華さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
茨木百合華(17)
レベル3
称号:転生者
保有スキル:なでなで
HP:15
MP:12
「というわけで、いきなり草原に放り出されたじゃん!!どうしろっていうのよ…。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が女子高生の前に現れた!
「うは!目の前にスライムが!!武器も何もない!!どうすんのさ、ねえねえ!!」
うろたえる、女子高生。
「あ!保有スキルを試せばいいじゃんね!!よし!!なでなで!!」
うばほん!!!
女子高生の手が、でっかくなった。
「えええ!!ナニこれ、何でこんなにでっかくなってんの?!」
女子高生の手が、スライムに勝手に伸びた。
なで、なで・・・手の平は、スライムを撫で始めた。
「ぎゃああああああ!!べたべたして気持ち悪いいい!!!」
女子高生は、大きくなった手をブルンブルンと振った。するとその反動で、女子高生の体が6メートルほど浮かび上がってしまい、そのまま頭から落下した。
打ち所が悪かったので女子高生はそのまま息絶えて、亡骸は余すところなくスライムが捕食した。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
女子高生は時間を巻き戻されて、コンビニ入り口に立っていた。コンビニに入る前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
女子高生はフェイスパック一枚とメロンスムージーを買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もうちょっと早く通りかかっていたらひかれてたやつじゃん!ちょーこええ!」
女子高生は、大学デビューしてモテまくったあと結婚して中年太りしたものの、人当たりが良くていつもニコニコしているので地域の民生委員に選ばれてたくさんの人たちに愛され、お葬式には248人の人が参列したということです。