なんとかなるでええわ!
田中正雄はごく普通の社長である。毎日豪快に笑い、毎日誰かを励ます、齢60の社長である。今日も今日とて、商工会議所に行った後、行きつけのコンビニで生ビールとあたりめを買って家路についていた―――のだが。
キュッ!!キキキィィィィイイイイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。田中正雄の魂と、女神が対面している。
「田中正雄さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
田中正雄(60)
レベル56
称号:転生者
保有スキル:なんとかなるでええわ!
HP:59
MP:20
「というわけで、いきなり草原に放り出すのか、乱暴なやっちゃ。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が社長の前に現れた!
「おおっ!?スライムだとっ?!武器も何もないのに、おいおい、ちょっと待ってくれよ!」
うろたえる、社長。
「おう、保有スキル使ってみないといかんか、なんとかなるでええわ?!」
スライムはただプルプルしている!
「なんや、なんとかなるもんやな!んじゃ達者で暮らせよ!」
社長はさっそうと歩きだした。スライムが後ろからついてくる!
「なんや、一緒に行くっちゅーんかい、まあええわ!旅は道連れ世は情けっちゅーてな、がはは!!」
仲良く並んで歩く二人の前に、三人組のゴブリンが現れた!
「おう、保有スキル使ってみないといかんか、なんとかなるでええわ?!」
ゴブリンたちは戸惑っている!
「なんや、なんとかなるもんやな!んじゃ達者で暮らせよ!」
社長はさっそうと歩きだした。ゴブリンたちが後ろからついてくる!
「なんや、一緒に行くっちゅーんかい、まあええわ!旅は道連れ世は情けっちゅーてな、がはは!!」
四人で歩いていると、人間たちの集落が現れた。社長は人懐こく人間に声をかけたが、人間はモンスターを四匹もつれている社長を見て怯え、遠くの見張り台から弓矢で攻撃した。社長は急所を撃ち抜かれて絶命した。四匹のモンスターは怒り狂って集落の人間たちを捕食した。四匹のモンスターたちは、社長を捕食することなく埋葬したらしい。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
社長は時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
社長はコンビニで生ビールとあたりめを買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もうちぃと早く通りかかっとったらおっそろしいことになっとったで、ほんま!!」
社長は、豪快な性格が幸いして誤発注で大損害を二回ほど出したものの持ち前の明るさと破天荒な発想でピンチを乗り越え市内有数の企業の代表になりましたが、二代目となった息子が非常にケツの穴の小さい人間だったため業績がどんどん落ちてしまい、80歳になった時に倒産したものの笑い飛ばして場の雰囲気を良くした次の日に突然倒れてそのまま息を引き取ったとのことです。




