いいとおもいます
花菱ルリはごく普通の八方美人である。毎日誰かの言葉に頷き、毎日いいね!をする、齢22の八方美人である。今日も今日とて、サークルミーティングに行った後、行きつけのコンビニでばんそうこうとプリスクを買って家路についていた―――のだが。
キュイッ!!キキキィィィィイイイイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。花菱ルリの魂と、女神が対面している。
「花菱ルリさん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
花菱ルリ(22)
レベル3
称号:転生者
保有スキル:いいとおもいます
HP:20
MP:13
「というわけで、いきなり草原に放り出すのって今の流行りなのかしら、困った…。。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が八方美人の前に現れた!
「ええっとぉ!?スライムだよねっ?!武器も何もないんですけど、どういうことこれっ!!」
うろたえる、八方美人。
「そうだ、保有スキル使ったら何とかなるんじゃない?!いいとおもいますってナニコレぇええ!!」
スライムはただプルプルしている!
「ああっと、スライムはそこでプルプルしてるだけでかわいいとおもいますよ!」
スライムがプルプルしているとオーガが現れた!棍棒を振り上げようとしている!
「ああ!!めっちゃりりしくてかっこいいとおもいますよ!」
オーガはその場でりりしく立ち止まっている!
そこに魔物の集団が現れた!ひいふうみい…五体くらいすごいのがいるぞ!!!
「わあ!!み、みんな仲良くするといいとおもいますよ…」
ばたっ。八方美人は魔力枯渇で倒れた!モンスターたちは、仲良く八方美人の体を分け合って捕食したのち、一斉解散したという。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
八方美人は時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
八方美人はコンビニでばんそうこうとプリスクを買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もうちょっと早く通りかかってたら怖いことになってたよね…怖いな…。」
八方美人は、誰にでも好かれる人生を送っていたというのに入社した企業でヤンデレ上司に出会い、散々いじり倒されて自分という人格を失ってしまったあとぼんやり生きていくこととなりましたが、学生時代に仲の良かった友達たちがいつもそばで支え続けてくれたおかげで40になる頃立ち直り、伴侶とともに穏やかな生活を送ったのち75歳で永眠したとのことです。




