ランドセル
松本蓮はごく普通の小学生男子である。毎日忘れ物をし、毎日靴の中を砂だらけにする、齢10の小学生男子である。今日も今日とて、学校を終えた後、行きつけのコンビニ前で友達と待ち合わせを約束した後家路についていた―――のだが。
ギュイッ!!ギギィキキッキイイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。松本蓮の魂と、女神が対面している。
「松本蓮さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
松本蓮(10)
レベル7
称号:転生者
保有スキル:ランドセル
HP:11
MP:6
「というわけで、いきなり草原だー!虫いるかな?どこだどこだ…。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が小学生男子の前に現れた!
「うげっ!スライムでてきた!武器も何もないじゃん!にげるか?!」
うろたえる、小学生男子。
「そうだ!試してみたら勝てるかもしんねえじゃん!保有スキル!!ランドセル?」
ばかー!!!
小学生男子のランドセルが輝いてふたを開く!!全教科の教科書がスライムに襲い掛かる!バシッ!バサッ!!スライムに20のダメージ!さらに飛び出したのは夥しいプリントの山!!!提出期限が過ぎたものがわんさか飛び出してスライムに貼り付く!!!スライムは視界を失った!プリントの下からはかびたコッペパンが飛び出した!スライムの口の中に押し込まれる!スライムは腹を壊した!58のダメージ!!さらにカマキリの卵が飛び出した!ちょうど孵化を迎えたようだ!!小さなカマキリがドでかいスライムに襲い掛かる!!カマキリたちは無心にスライムを捕食し始めた!!12のダメージ!!スライムは間もなく倒される!」
「うわー!すげえ!この隙に逃げよーっと!…ランドセル、めっちゃ軽いな!!」
軽くなったランドセルを背負ったまま、小学生男子はスライムから離れ始めた。少し草原を歩くと、小学生男子の心をくすぐる少し大きな穴を発見した。小学生男子はしゃがみ込んで穴の中を観察し始めた。
「わあ!なんだろこの穴…なんかの住処かな…。」
てれれてっててーーー!!!レベルが上がった!小学生男子はレベルが―――パクリ。
小学生男子は、レベルが上がった瞬間に、草原の草に紛れて獲物を待ち構えていたでっけえカエルに一飲みされた。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
小学生男子は時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まった前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
小学生男子は行きつけのコンビニ前で友達と待ち合わせを約束した後家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もうちょっと早く通りかかってたら俺っち死んでたじゃん!こえー!明日みんなに自慢しよ!!」
小学生男子は、やった宿題を必ず家に忘れたりポケットの中にダンゴムシを入れっぱなしで洗濯機に放り込んでド叱られたりしていましたが、虫好きが高じて生物研究者の道に進み何冊も図鑑を出しムシキングと呼ばれ崇められるようになり、72歳でこの世を去った後は蝉がうるさく鳴く墓地に埋葬されたとのことです。




