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小説家

エーベルハルトはごく普通の青年である。毎日図書館に行って、毎日ブルストを食べる、齢30の青年である。今日も今日とて、図書館帰りに、行きつけのコンビニでクールミントガムと魚肉ソーセージを一袋買って家路についていた―――のだが。



キイイイイイ!!キキィイイイイイイイイイイイイイイ!!!


ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。



真っ白な空間。エーベルハルトの魂と、女神が対面している。


「エーベルハルトさん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」

「はい。」


「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」



エーベルハルト(30)


レベル10


称号:転生者


保有スキル:小説家


HP:51

MP:35



「というわけで、いきなり草原に放り出されてしまいましたね…。」


べよん、べよん。

水色の、ぶよぶよした丸い塊が青年の前に現れた!


「ヘイ!目の前にスライムが!!武器も何もないというのに!!本当に?ふうむ・・・。」


うろたえる、青年。


「そうだ、保有スキルを試してみよう。よし…小説家!!!」


うばほん!!!


ペンとノートが出てきた。


「ここに物語を記せと?」


べよんべよん!!

水色のぶよぶよが青年に迫る!!


「今日、僕は、草の上で目を覚ましました。気持ちの悪いスライムが一匹現れました。ぼくは」


悠長に文字を書く青年に、スライムが容赦なく襲い掛かった。

ノートはべしゃべしゃになり、ペンはにじんでしまって文字が書けない。


「Scheiße!」


青年は文字の書けなくなったペンをスライムに突き立てたりして抵抗していたが、麻痺毒が回って動けなくなり、そのまま捕食されてしまった。ペンは壊れたがノートは捕食されることなくその場に残ったので、気持ちの悪いスライムが一匹現れたままになった。ノートが朽ち果てるまで、スライムはそこに居続けたという。恐ろしい話だ。



「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」


青年は時間を巻き戻されて、コンビニ入り口に立っていた。コンビニに入る前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。


青年はクールミントガムと魚肉ソーセージを一袋買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。


「もう少し早く帰ってたらひかれてたかもしれませんね、よかった。」


青年は、図書館の司書のお姉さんと恋に落ちたものの食の好みの違いから破局し、40歳で日本を去りましたが、ドイツで日本語講師をしていたところ日本人の奥さんをもらうことになり、48歳で再び日本の地を踏み、86歳で人生を終えた時は八人の孫に囲まれていたとのことです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 5/5 ・わお。心からの叫びありがとうございます。クソッタレ的な意味かな? [気になる点] チートがことごとく役に立たねぇ。女神さま遊んでるだろw [一言] 普通にいいエンド
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