筋肉ファイター
野々村陽一はごく普通のマッチョである。毎日ジムに行って、毎日プロテインを摂取する、齢35のマッチョである。今日も今日とて、ジム帰りに、行きつけのコンビニでプロテインミルクとサラダチキンを買って家路についていた―――のだが。
キキィイイ!!キイイイイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。野々村陽一の魂と、女神が対面している。
「野々村陽一さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
野々村陽一(35)
レベル52
称号:転生者
保有スキル:筋肉ファイター
HP:205
MP:2
「というわけで、いきなり草原に放り出すとは何ということだ。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がマッチョの前に現れた!
「ほう!目の前にスライムが現れたな!!武器も何もない!!この筋肉で、戦うしかあるまい!!」
うろたえない、マッチョ。
「よし!保有スキルを試そう!!いくぞ!!くらえ!!マッチョパンチ!!!」
ぼへっ!!スライムは著しく凹んだ!20のダメージ!
「マッチョポージング!!」
スライムは筋肉美に見とれている!!
「なんだ!!筋肉にあこがれているのか!よしお前に筋トレをしてやろう!!まずはその場でスクワットだ!!足を開いて膝を落としってお前!!膝も足も何もないじゃないか!!」
スライムは筋トレができないと言われた自分の体を呪った!呪いが当たり一面に広がる!マッチョは呪われてしまった!呪われたマッチョは動くことができない!ポーズをとったまま、石になってしまった!スライムも石になってしまった!へこんだスライムとマッチョの石はしばらく草原に立っていたが、あるとき商人が通って、これはすごいと町まで持って帰ってしまった。持ち帰られたマッチョ像は、噴水前に置かれることになったが、重たすぎて運搬に失敗してしまい自慢の広背筋の所から真っ二つに割れてしまった。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
マッチョは時間を巻き戻されて、コンビニ入り口に立っていた。コンビニに入る前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
マッチョはプロテインミルクとサラダチキンを買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もう少し早く通りかかっていたらひかれてたのでは?俺の筋肉でも車には…勝てるに違い…ないッ!!」
マッチョは、毎日きっちり筋トレを続け自慢の筋肉を維持していましたが、筋肉を過信しすぎてベントオーバーロウでぎっくり腰になってしまい治りきる前にまた悪くするということを何度か繰り返した後ごりごりのトレーニングをやめてウォーキングに精を出すようになり、ちょっとガタイのいいおじいちゃんとして普通に生きて73歳で人生を終えたのですが、体重が80キロもあったので棺桶を持ち上げるのが大変だったとのことです。




