漆黒の闇
川崎恵理子はごく普通のおばさんである。毎日パートに行って、毎日家事をこなす、齢48のおばさんである。今日も今日とて、パート帰りに、行きつけのコンビニで通販の支払いをしレジ前の団子をワンパック買って家路についていた―――のだが。
キィイイイイイ!!キキイイイイイイイイイイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。川崎恵理子の魂と、女神が対面している。
「川崎恵理子さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
川崎恵理子(48)
レベル6
称号:転生者
保有スキル:漆黒の闇
HP:35
MP:20
「というわけで、いきなり草原に放り出されたけど、どうしろと…。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がおばさんの前に現れた!
「うは!目の前にスライムが!!武器も何もない!!どうするの、この場合。」
うろたえる、おばさん。
「あっ、保有スキルを試せばいいのよね?よし!!漆黒の闇!!」
うばほん!!!
辺り一面真っ暗になった。
「わあ!!なんも見えない!!何これ!!」
ずるべっちゅずるずるぶべっぶべっ・・・
闇の中でスライムに襲われたおばさんはじっくりゆっくり溶かされて消えてなくなった。
しかしおばさんが呼びだした闇はいつまでたっても草原に残ってしまい、いつしか魔物たちの楽園となった。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
おばさんは時間を巻き戻されて、コンビニ入り口に立っていた。コンビニに入る前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
おばさんは通販の支払いをしレジ前の団子をワンパック買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もうちょっと早く通りかかっていたらひかれてたんじゃないの?怖いなあもう!」
おばさんは、定年までパート先を勤めあげたあと、孫娘の世話をしつつ作ったフェルトマスコットが人気となりアニメ化までされて、お墓にはそのキャラクターが刻まれたとのことです。