起承転結
結城かほはごく普通の漫画家である。毎日ネームを切り、毎日締め切りに怯える、齢34の漫画家である。今日も今日とて、原稿データを担当に送った後、行きつけのコンビニでカルボナーラと野菜ジュースを買って家路についていた―――のだが。
キキギギイッ!!ギギィキキッキイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。結城かほの魂と、女神が対面している。
「結城かほさん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
結城かほ(34)
レベル10
称号:転生者
保有スキル:起承転結
HP:20
MP:20
「というわけで、いきなり草原ねえ…トンデモ展開、ねえ…。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が漫画家の前に現れた!
「はいはい、スライムね!武器も何もないのにでてきちゃうわけねっ!」
うろたえる、漫画家。
「じゃあね、試してみないとね、保有スキル!!起承転結?ああ、考えないといけないのか…。」
べよんべよん!!
水色のぶよぶよが漫画家に迫る!!
「スライムが現れた!スライムはぷよぷよしている!スライムは突然走り出した!スライムは、自分の愚かさを、知った。」
スライムはぷよぷよしたあといきなり高速で移動し、その場にとどまってプルプルしている!
「スライムは気が付いた!自分は悪ではないという事に!自分はスライムではない!…目の前の人間と同じ、人なのだ。」
スライムはプルプルしていたが、やがてイケメンになった!
「ギャー!!めっちゃ好みのイケメン!!水色のサラサラロン毛?!空色の瞳ぃイイイイ!!!だ、抱いてくださいお願いします(*´Д`)」
スライムは漫画家をぎゅっと抱きしめて、そのまま捕食した。イケメンは、そのまま草原の彼方へと消えた。その後、人を食らうイケメンがいると原住民の間で情報が流れ、イケメンに近づいてはならないという暗黙の了解が広まり、この世界はB専女子であふれることになったという。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
漫画家は時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
漫画家はコンビニでカルボナーラと野菜ジュースを買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もう少し早く通りかかってたら、ひかれてた?…異世界転生とか、しちゃったりしてね、フフフ」
漫画家は、12冊目の単行本にして初の連載が大当たりし、アニメ化映画化ドラマ化されたはいいが恐ろしいほどに内容改ざんされて本気で凹んでしまい大円団の連載終了が霞んでしまったためすっかり意気消沈し、画風とPNを変えてコミックエッセイを出すことにした結果こちらも映画化ドラマ化されて恐れ戦いたのですが、今度はしっかり作者側の意見が通ったので安心して晩年まで連載を続け65歳で闘病記を執筆中に眠るようにこの世を去ったという事です。




