別腹
丸岡清はごく普通の太りすぎである。毎日食べ過ぎて、毎日きつい服を無理やり着る、齢47の太りすぎである。今日も今日とて、ごはんのおかわりが自由なとんかつ定食を腹いっぱい食べた後、通りがかりのコンビニで純度100チョコアイスバーとダブルシュークリームを買って午後からの仕事に行こうとしていた―――のだが。
キュギキキイッ!!キキキィィィィイイイイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。丸岡清の魂と、女神が対面している。
「丸岡清さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
丸岡清(47)
レベル10
称号:転生者
保有スキル:別腹
HP:38
MP:5
「というわけで、いきなり草原に放り出すのはね、うん、さすがにひどいと、思われ。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が太りすぎの前に現れた!
「これ、スライムだよね?武器も何もないのに、素手で戦う?無理でしょそんなん…。」
うろたえる、太りすぎ。
「そうだ、保有スキル使わないと!別腹?そういやまだデザート食ってねえな…こいつ食えるのか?よく見たら、ゼリーっぽく、見えないこともないな、ふんふん、においもソーダっぽいぞ…?」
スライムはプルプル震えている!
「よし、ちぎって食ってみよう!腹いっぱいだけど、デザートは別腹だもんね!」
太り過ぎはスライムをぶちぶち引きちぎって口に入れた!
「うん…まあ、食えないこともないか…。デザートとしては不合格だな、甘みと爽やかさがない。やっぱさ、チョコが一番うまいんだって。あー美味いチョコ浴びるほど食ってみてー!」
カッチ―――――――ン!!スライムは怒り心頭だ!!スライムは腹立たしい脂肪の塊を頭から捕食した!スライムは捕食し終わった後のあまりの胃袋のもたれっぷりに辟易し、二度と脂ののりすぎた人間を捕食しようとは思わなかったらしい。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
太りすぎは時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
太りすぎはコンビニで純度100チョコアイスバーとダブルシュークリームを買って午後の仕事に向かった。仕事先に向かう途中の交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もうちょっと早く通りかかってたら事故ってたやん…。これ以上保険代あげる訳には…いかん!!」
太り過ぎは、いよいよ着ることのできる作業着のサイズがなくなってしまい特注することになったものの、非常に値段が高くなってしまうのでようやく痩せる覚悟を決めましたが、なかなか効果が出ず結局50歳になって糖尿病を発症するまで三桁の体重を保ったままボタンのとまらない作業着を着て作業に当たり続け、60になる頃80キロまで落ちた後は一気に体重が減り68で人生を終えた時は55キロだったとのことです。




