10円みっけ!
渡辺守行はごく普通のけちである。毎日10円拾わないかなと願って、毎日節約を欠かさない、齢35のけちである。今日も今日とて、図書館に新聞を読みに行った後、行きつけのコンビニでトイレを済ませて何も買わずに家路についていた―――のだが。
ギギッキイ!!キッイィイイイイイイイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。渡辺守行の魂と、女神が対面している。
「渡辺守行さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
渡辺守行(35)
レベル13
称号:転生者
保有スキル:10円みっけ!
HP:59
MP:10
「というわけで、いきなり草原に放り出されるとかさ、ゴールドくらいないのかよ!」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がけちの前に現れた!
「げげ、スライムかよ!武器も何もないのに、戦えんの?勝ったらいくら出てくるんだよ。」
うろたえる、けち。
「くっそ、保有スキルを試してみるしかねえな、十円みっけ!」
キラーん!!
けちの目の前に十円が現れた!すかさず拾うけち!!めっちゃ早い!!
スライムは、今にも襲い掛かろうとしている!
「十円みっけ!十円みっけ!十円みっけ!十円みっけ!十円みっけ!十円みっけ!十円みっけ!十円みっけ!ヒャッホー!めっちゃ儲かったー!」
けちは10枚の十円を拾ってご満悦だ!!大喜びでじゃらじゃらやってるけちをスライムが頭から飲み込んだ。けちは手を伸ばして十円玉10個をスライムの捕食から守りつつ全身を溶かされて絶命した。ピカピカ輝く十円玉が十枚その場に残されたが、誰の目に留まることもなく土の中に埋もれて消えた。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
けちは時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まった前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
けちはコンビニでトイレを済ませて何も買わずに家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「うわ、ちょっと早く通りかかってたらぶつかってたな、慰謝料いくらくらい取れたかな、フフフ。」
けちは、ポイントを貯めに貯めたカードのたくさん入ったカバンを盗まれてしまい意気消沈してしまったのですが、慰めてくれた価値観の合う女性と結婚できてずいぶん元気を取り戻し55歳で事故死するまでに相当なお金を貯めることに成功したものの、自分は一銭も使うことがなかったことを周りの人たちは他人事ながら気の毒に思ったそうです。




