熟睡
野々村明彦はごく普通のねぼすけである。毎日うとうとして、毎日昼寝を欠かさない、齢31のねぼすけである。今日も今日とて、公園のベンチでうとうとした後、行きつけのコンビニでMEGAサメールとガジガジくんを買って家路についていた―――のだが。
ギギッキイ!!キイイィイイイイイイイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。野々村明彦の魂と、女神が対面している。
「野々村明彦さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
野々村明彦(31)
レベル6
称号:転生者
保有スキル:熟睡
HP:20
MP:2
「というわけで、いきなり草原に放り出されたか、ふ、ふぁああ、どうすっか、なあ…。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がねぼすけの前に現れた!
「おお、スライムじゃん。武器も何もないのに、どうすんだ、ふあぁあああ、ヤベーな…。」
うろたえる、ねぼすけ。
「ふーん、保有スキルを試さないとまずいか、ええと、熟睡?ふあぁああああ…。」
ねぼすけはいきなり眠ってしまった!ねぼすけはいびきをかいている!スライムは戸惑っている!!ねぼすけは寝返りをうった!!スライムに勢いよく腕が当たる!スライムに5のダメージ!!ねぼすけは寝返りをうった!!スライムに勢いよくかかと落としが炸裂!スライムに8のダメージ!!
「う、うーん、ちょっと、寒い…。」
ねぼすけはスライムを引き寄せて掛布団のように自分の体にふわりとかけた!スライムは動けない!そのまま7時間が過ぎた!!
「うーん、よく寝た…うは!!何これ!!ちょっ!!ヤベっ!!うわ、うわぁあああ!!!」
目を覚ましたねぼすけには、熟睡スキルが発動されていない!瞬く間にスライムの毒が全身に回る!ねぼすけはそのまま永遠の眠りについた。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
ねぼすけは時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まった前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
ねぼすけはコンビニでMEGAサメールとガジガジくんを買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「あーあ、ちょっと早く通りかかってたら永遠の眠りにつくとこだったよ、怖い怖い、ファー。」
ねぼすけは、いつまでたっても寝坊のくせが抜けきらなくて50歳でまさかのリストラにあいましたが、だんだん年を重ねるごとに自然と早起きするようになり、早朝の清掃係として長く勤めていたもののいつしか不眠症になってしまい、64歳で人生を終える時にはずいぶんぶりに穏やかな眠りにつけると微笑んで旅立っていったそうです。




