ブラック
高木俊二ははごく普通の量販店店員である。毎日納品をさばいて、毎日レジを打つ、齢26の量販店店員である。今日も今日とて、勤務を終えた後、行きつけのコンビニで紙パックジュースとフレンチクルーラーを買って家路についていた―――のだが。
キキキキイ!!キキキキキイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。高木俊二の魂と、女神が対面している。
「高木俊二さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
高木俊二(26)
レベル4
称号:転生者
保有スキル:ブラック
HP:8
MP:13
「というわけで、いきなり草原に放り出されるとか…どういうことですか…勘弁してください…。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が量販店店員の前に現れた!
「えと…スライム…ですねぇ。武器も何もないのに…なんで僕がこんな目に…。」
うろたえる、量販店店員。
「えと…。保有スキルありましたよねえ…使えますかねえ…ブラック?」
うばほん!!!
量販店員の顔と同じくらいの大きさの黒い何かが、スライムに向かって飛んで行った!
ずびっちゅ!!スライムは少しダメージを受けている!
「全然効いてないじゃないですか…ダメですねこれは、どうせこんなもんですよ、効かないくせにチートとか言い張るなんてほんとどうかしてますよね、まったくなんなんですかあの女神ってやつは。クソみたいなやつが神なのるんじゃないよってホントむかつくな。消滅しろよマジで。」
突如天から雷が落ちた。量販店店員は落雷を受けて気絶した。気絶した量販店店員をスライムは捕食し始めたが、先ほど放たれた黒い塊が邪魔をして、うまく捕食が進まない。身動きが取れない中量販店店員は目を覚ましたがどうすることもできない。体をじっくりゆっくり溶かされるという拷問のような三日間を過ごしたのち、量販店店員は絶命した。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
量販店店員は時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まった前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
量販店店員はコンビニで紙パックジュースとフレンチクルーラーを買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もう少し早く通りかかってたら、ひかれてた、か…。怖いけど、まあ、こういう事も、あるよね…。」
量販店店員は、毎日の仕事のストレスがハンパなくてだんだん性格がひん曲がっていって孤立してしまったものの量販店の倒産で転職することになり、新たな就職先でその几帳面な性格が認められてとんとん拍子に社長に就任、かわいい嫁をもらいましたがおおざっぱな性格で79歳で人生を終えるまで毎日そのガサツさにダメージを受け続けていたという事です。




