僕イケメン
木村正樹はごく普通のイケメンである。毎日女子高生に逆ナンされ、毎日ムイッターでつぶやく、齢21のイケメンである。今日も今日とて、デート帰りに、行きつけのコンビニでヘアワックスとエネルギーチャージゼリーを買って家路についていた―――のだが。
キュキキキキイ!!キキキィィィィイイイイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。木村正樹の魂と、女神が対面している。
「木村正樹さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
木村正樹(21)
レベル6
称号:転生者
保有スキル:僕イケメン
HP:8
MP:41
「というわけで、いきなり草原に放り出された俺って、結構ついて無くない?」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がイケメンの前に現れた!
「わお!目の前にスライムとか?!武器も何もないんだけど!!ちょ、ありえないっす!!!」
うろたえる、イケメン。
「あ、保有スキルを試してないわ!!ええと!!僕イケメン!」
スライムは、イケメンに見とれている!
「おわっ?!マジか!!俺に見とれてんの?ちょーかわいいじゃん!!」
スライムは照れている!!
「ナニナニ、照れてる君も、かわいいよっ!!ふふ、君女の子だったんだ、つやつやしててホントキレイだね!もち肌って言われない?僕ね君みたいな娘すっごく魅力的だと思う!今から一緒にスタボいかない?美味しい抹茶フラペチーノ二人で分け合おうよ、ねっ!」
スライムは大喜びで、イケメンに抱きついた!!イケメンは、スライムに全身を覆いつくされて、呼吸ができなくなって絶命した。スライムは最愛の人の息の根を止めたことに深い悲しみに包まれたものの、せっかくだから捕食しとくかと考えて、すべて吸収し終わる頃にはあった出来事をつるりと忘れてしまったという。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
イケメンは時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まった時に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
イケメンはコンビニでヘアワックスとエネルギーチャージゼリーを買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もうちょっとさあ、早く通りかかってたらひかれてたやつじゃね!危ねー!マジこえーやつじゃん!」
イケメンは、モテにモテまくったもののどうもしっくりくる女子に出会えないまま中年になり、気が付いたら誰もちやほやしてくれなくなって落ち込みましたが、一人になる時間が増えて己を振り返る時間が持てたことで人生観が変わり、誰かの悩みを聞く職業に就いて伝説を残したのち68歳で生涯を終えるまで多くの人たちに笑顔を取り戻し続けたという事です。
さっき間違えてあげちゃいましたすみません(。>д<)




