にゃーん
榎本花ははごく普通の専門学校生である。毎日エクセルを開いて、毎日飼い猫のおなかをモフモフする、齢19の専門学校生である。今日も今日とて、授業を終えた後、行きつけのコンビニで生クリームプリンとカフェラテを買って家路についていた―――のだが。
キキキキイ!!キキキキキキイイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。榎本花の魂と、女神が対面している。
「榎本花さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
榎本花(19)
レベル6
称号:転生者
保有スキル:にゃーん
HP:24
MP:15
「というわけで、いきなり草原に放り出されてってさあ!!マジなんなん?!ちょ、マジか!!」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が専門学校生の前に現れた!
「はへ?!スライムかよっ!武器も何もないとかマジウケる!!!どうしろと!!!」
うろたえる、専門学校生。
「そうだっ!保有スキル!ええええっとぉ!!にゃーんっ!!!!!」
うばほん!!!
ちょーでっかい飼い猫が、召喚された。猫は、スライムを威嚇している。猫パンチが炸裂!スライムが一部飛び散る!!猫パンチが炸裂!スライムが一部飛び散る!!飛び散ったスライムの欠片が専門学校生にビチビチと付いた。
「わ、やだ!!めっちゃしびれる!!いた、痛いよ、うぅわぁああ!!!」
猫は、スライムを倒した。だが、専門学校生はスライムの欠片の毒で、しびれている。しかも溶け始めている。猫は、飼い主のピンチに、べろりべろりと、スライムの欠片をなめとり始めた。刃金の様な猫の舌が、専門学校生の溶け始めた皮膚を抉る。しびれて何も言えず、動けなくなった専門学校生は猫にいつまでも舐められ続け、絶命した。猫は、スライムの毒が回り、次の日に絶命した。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
専門学校生は時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まった前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
専門学校生はコンビニで生クリームプリンとカフェラテを買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もうちょい早く通りかかってたらひかれてたやつじゃね…?マジちょー怖い、信じらんない。」
専門学校生は、大手企業の事務として就職したのち有休を取らせてもらえないことに腹を立てて辞表を叩きつけ、退職金で猫マンションを経営したところ大うけし資金面では恵まれたものの子猫の保護依頼があとを絶たずいつも心を痛めていましたが、慈愛に満ちたパートナーと出会って猫に囲まれて88歳でこの世を去りました。
猫が乗った重みで息絶えたのか、息絶えた後で猫が乗っかったのか、誰もわからなかったとのことです。




