本気
浅岡修二はごく普通のニートである。毎日パソコンにはり付き、毎日お母さんからお小遣いをもらう、齢34のニートである。今日も今日とて、お小遣いをもらったので、行きつけのコンビニでデカ盛りカップ焼きそばと桃チューハイのロング缶を買って家路についていた―――のだが。
キキキキキイ!!キキキイイイイイイイイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。浅岡修二の魂と、女神が対面している。
「浅岡修二さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
浅岡修二(34)
レベル50
称号:転生者
保有スキル:本気
HP:14
MP:62
「というわけで、いきなり草原に放り出すとか、マジか、ふざけんなよ、クソ女神が。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がニートの前に現れた!
「うお!目の前にスライムだと?!武器も何もねえじゃねえかっ!!おいおい、どーすんだよっ!!!」
うろたえる、ニート。
「そうだ、保有スキルを試せば!!よーし!!本気ぃ!」
スライムは、今にも襲い掛かろうとしている!
「本気!!マジ本気!!本気出してるって!マジで!!!」
襲い掛かるスライムを見て、ニートは本気を出した!!!ものすごい勢いで、スライムから逃げるニート。スライムは、追いつけない!!ニートは逃げ出すことに成功した!
ニートは、そのままあてもなく草原を歩き続けた。やがて人里を見つけたが、人々を見てすっかり気後れしてしまったニートは、何も言わずに草原へと戻った。そこに、一人の女性が現れニートにやさしく微笑んだ。人恋しかったニートはすっかりほだされてしまい、女性に近づいたところその下半身に八本の足を持っていることに気が付いた。慌てて逃げ出そうとした時にはもう、クモの糸が絡まって身動きができなくなっており、そのまま捕食されてしまった。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
ニートは時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まった時に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
ニートはコンビニでデカ盛りカップ焼きそばと桃チューハイのロング缶を買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もうちょい早く通りかかってたらひかれてたやつだよ。危ねーな、マジ車のんなよ!」
ニートは、ある日突然愛用パソコンのデータがすべてぶっ飛び、生きる気力を無くして旅に出たのですが、そこでヤンキーの襲撃にあい長期入院する羽目になって半泣き状態だったところ看護婦さんが目をかけてくれて、優しくしてもらっているうちに自分も優しくなりたいと思い始め介護の仕事を手伝うようになったのち、人の終焉に寄り添うことに生きがいとやりがいを感じるようになり、自らも職員に寄り添ってもらってこの世を去ったという事です。




