笑うかどには福来る
永見康はごく普通の幸せ者である。毎日今日はいいことがあったなとニコニコし、毎日明日もいい事あるよねとニコニコする、齢18の幸せ者である。今日も今日とて、町で配ってるティッシュを二つもらえたことにニコニコした後、行きつけのコンビニでマシュマロと柔らかするめを買って家路についていた―――のだが。
キュ―――キキ―――ッ!ギュギュギギキギュイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。永見康の魂と、女神が対面している。
「永見康さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
永見康(18)
レベル10
称号:転生者
保有スキル:笑うかどには福来る
HP:9
MP:11
「というわけで、いきなり草原に放り出されてる!!すごい!!何これ…。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が幸せ者の前に現れた!
「わあ!スライムだ!はじめてみたよ!」
うろたえない、幸せ者。
「そうだ、保有スキル試してみよーっと!笑うかどには福来るかあ、あはは!おもしろい!!」
うばほん!!!
幸せ者の前に、福の神がやってきたぞ!福の神の攻撃!ずばばば!スライムに35のダメージ!!
「え、ちょっと!!スライム攻撃したらかわいそうじゃん!!」
福の神は幸せ者の言うことなどまるで聞いていない!何という押し付けがましさだ!!!福の神の攻撃!ずばばば!スライムに35のダメージ!!
「ちょっと!!やめたげてよ!!!」
幸せ者はスライムをかばった!福の神の攻撃!ずばばば!幸せ者にに35のダメージ!!幸せ者は絶命した。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
幸せ者は時間を巻き戻されて、コンビニの入り口に立っていた。コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
幸せ者はコンビニでマシュマロと柔らかするめを買って帰路に就いた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「うわあ、車のひと大丈夫だったのかな…。」
幸せ者は、いつもニコニコして回りを幸せな気分にしてくれるので、周りの人たちからたいそう可愛がられ、さらにニコニコするという幸せスパイラルに巻き込まれて山も谷もなくただ穏やかにニコニコ笑いながら人生を謳歌し、99歳でこの世を去ったということです。




