おしゃれ
石本麻衣はごく普通のおませな子である。毎日おしゃれをして、毎日お母さんの化粧品をいたずらする、齢7のおませな子である。今日も今日とて、宿題を終えた後、行きつけのコンビニでセロンスターチョコとキュルグミを買って家路についていた―――のだが。
キイイイイ!!キキキイイイイイイイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。石本麻衣の魂と、女神が対面している。
「石本麻衣さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
石本麻衣(7)
レベル1
称号:転生者
保有スキル:おしゃれ
HP:4
MP:6
「というわけで、いきなり草原に放り出されちゃった、どうしたら、いい?、おかあさん…。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がおませな子の前に現れた!
「ええ?!スライムだよねっ?!武器も何もないよぉっ!!だ、だれかあ!!!」
うろたえる、おませな子。
「そうだ、保有スキル!おねがい!!おしゃれっ!!!」
うばほん!!!
目の前に、おしゃれすぎるドレスが現れた!!光り輝くドレスに、スライムは怯んでいる!!
「わあ!!素敵!!これ着たい!着ていいよね!!着ちゃお!!髪飾りも欲しいな、あと、靴と、宝石と、お化粧もしたいし…おしゃれええええ!!!」
ぷすん
MPが足りない!!魔力枯渇を起こしたおませな子は気絶してしまった。気絶して倒れ込んだので、ドレス前面に輝いていた宝石が体の下敷きとなり、輝きを失った。スライムはその隙を見逃さず、おませな子を捕食した。スライムは、宝石ごと捕食したので、聖なるオーブの力で消滅してしまった。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
おませな子は時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まった前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
おませな子はコンビニでセロンスターチョコとキュルグミを買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「あとちょっと早く通りかかってたらひかれてたかも?こわい、お母さんに言わないと。」
おませな子は、小学六年生でお化粧デビューして以来長い事ギャルメイクをしていたものの、26で出会った真面目な好青年がナチュラリストだったため、すべての化粧品と美容グッズをためらうことなく処分した後田舎で共にロハス生活を送りましたが、介護が必要となったあたりから再びおしゃれに目覚め始めて毎日ド派手な化粧をするようになり、老人ホームで異彩を放ちながら人生を終えたとのことです。




