お届け物でーす
馬場義正はごく普通の宅配ドライバーである。毎日今からお届けしますねの電話をして繋がらない事にシュンとして、毎日重たすぎる荷物を落とさないよう細心の注意を払う、齢29の宅配ドライバーである。今日も今日とて、二度目の時間指定配達なのに留守を確認した後、行きつけのコンビニでどんぶりプリンと醤油を買って帰路についていた―――のだが。
キイギギギュ―――ギギキュキュキイッ!!ギュイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。馬場義正の魂と、女神が対面している。
「馬場義正さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
馬場義正(29)
レベル30
称号:転生者
保有スキル:お届け物でーす
HP:100
MP:10
「というわけで、いきなり草原に放り出すとは、ううむ、もう少しやりようもあったんじゃないのか?」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が宅配ドライバーの前に現れた!
「お!スライムか?!戦うのか?武器も防具も何もないぞ!」
うろたえる、宅配ドライバー。
「ああ!保有スキルあるじゃないか、お届け物でーす?なんだそれは。」
うばほん!!!
宅配ドライバーの手に、荷物が現れた!かなり重いぞ!!
「うっ!なんだこれは!!これで戦えという事か?よし!投げてみよう!!」
ずべちゃああああああああああああ!!!
クッソ重たい荷物をスライムに投げつけた!スライムにクリティカルヒット!!スライムの体が辺りに飛び散る!!
「ぎゃあああああああああああああ!!!!」
宅配ドライバーは荷物を受け止めきれずに飛び散ってしまったスライム片を体中に浴びて毒が回って絶命した!なぜ荷物を渡さない!!お客様の大切な荷物を投げるなんてとんでもない!!
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
宅配ドライバーは時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
宅配ドライバーはコンビニでどんぶりプリンと醤油を買って帰路についた。自宅近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「あと少々早く通りかかってたら荷物の損害賠償問題になってたよ。」
宅配ドライバーは、重たい荷物を持たされることも多かったものの持ち前の強靭な筋力でなんとか乗り越え、ずいぶん頑張っていたのに年齢とともに運べるものに限界が出るようになってしまい仕分け作業要員に転向しきっちり勤め上げた後、ピンポンを押しても出てこないのを不審に思った宅配の兄ちゃんの通報で70歳の人生を終えていたのを駆け付けた警察に発見されたとのことです。




