内申書作成
阿部鈴世はごく普通の中学校教師である。毎日生徒の進路相談にのり、毎日モンスターペアレントの恐怖におびえる、齢44の中学校教師である。今日も今日とて、不登校中の生徒の家にプリントを届けに行った後、行きつけのコンビニで滋養強壮ドリンクハイパーとチョポラBBを買って家路についていた―――のだが。
ギュウギュキュギュキュ―――キキ―――ッ!ギギキギュイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。阿部鈴世の魂と、女神が対面している。
「阿部鈴世さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
阿部鈴世(44)
レベル34
称号:転生者
保有スキル:内申書作成
HP:30
MP:30
「というわけで、いきなり草原に放り出すんだね、すごいな、めちゃくちゃだよ。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が中学校教師の前に現れた!
「ううわあっ!スライム?!なにこれ、やっつけるの?!」
うろたえる、中学校教師。
「保有スキル試せば切り抜けられるかも?!内申書作成って…。」
うばほん!!!
中学校教師の教卓(鍵付き)が現れた!中学校教師は教卓の鍵を開けた!スライムの内申書が入っているぞ!!
「スライムさんは、いきなりとびかかるような落ち着きのなさもなく、先生のいう事をよく聞く優良児です。まっすぐ家に帰るので、非行の様子もありません。」
中学校教師は内申書に記入をした!スライムは内申書に書かれてるんだったらそれを受け入れなけらばいけないなと思ってまっすぐ家に帰った。
そこにワーウルフの大軍が現れた!
「ワーウルフの皆さんは、集団行動が得意でいつもボランティア活動に勤しんでいます。体を動かすことが得意なのでそれを頼りにしているお友達がたくさんいます。」
ワーウルフの皆さんは、内申書なんてくそくらえだと思っているので、まったく中学校教師の内申書など気にしていない!ワーウルフの皆さんはみんなで仲良く中学校教師を分け合って捕食した。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
中学校教師は時間を巻き戻されて、コンビニの入り口に立っていた。コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
中学校教師はコンビニで滋養強壮ドリンクハイパーとチョポラBBを買って帰路に就いた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「ちょっとちょっと!!もう少し早く通りかかってたら三者面談できなくなっちゃってたよ。」
中学校教師は、入試で失敗した生徒の親から激しく攻め立てられてずいぶん凹んだこともありましたが、真面目に学ぶ生徒たちに真摯に向き合い不真面目で学ばない生徒たちに真っ向から立ち向かい、多くの生徒たちを導き続け、75歳でこの世を去るときには多くの生徒に見送られて旅立ったという事です。




