少年漫画の魂
重野祐樹ははごく普通の少年である。毎日漫画を読み、毎晩夜更かしをする、齢16の少年である。今日も今日とて、レンタルショップ帰りに、行きつけのコンビニでクーリッチュアイスと強炭酸水を買って家路についていた―――のだが。
キキキイイイ！！キキュイイイイイイイイイイイイイイ！！！
ドガ――――――――――――ん！！ぐわしゃぁああ！！ぶちゅ。
真っ白な空間。重野祐樹の魂と、女神が対面している。
「重野祐樹さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ？」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
重野祐樹（16）
レベル6
称号：転生者
保有スキル：少年漫画の魂
HP：8
MP：2
「というわけで、いきなり草原に放り出すとかさ、マジむかつくな、ふざけんな。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が少年の前に現れた！
「は？！目の前にスライム？！武器も何もねーけど！！どうしろっての！！！」
うろたえる、少年。
「ああ、保有スキルを試しゃいいのか！えと…少年漫画の魂？」
うばほん！！！
目の前のスライムが、厳ついゴリマッチョになった！！
「は・・・はあ？！」
厳ついゴリマッチョは、愛のパンチを繰り出した！友情パワーが漲る！！宇宙の果てから幸運の星が輝き、恐ろしいスナイパーが狙い撃つ！禍々しいオーラが辺りを包み込む！元気の力を集め始めると少年の体はびよーんと伸びて、ついには破天荒なおまわりさんに連行されてしまった。
「おい！！なんだこのやっつけ感は！！ふざけんな！！」
呆れて見ていたゴリマッチョは、自らの役目を思い出し、連行される少年を捕食し、卵を産んだ。卵から孵ったアリは、ゴリマッチョと盤面対決をし、最後にゴリマッチョの膝の上で眠るように息絶えたという。
「う、うーん？？？なんか夢でも見ていたような？？」
少年は時間を巻き戻されて、コンビニ入り口に立っていた。コンビニに入る前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
少年はクーリッチュアイスと強炭酸水を買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もうちょい早く帰ってたらひかれてたやつじゃね？！やばくね？ひかれんくてよかったわ。」
少年は、漫画の読み過ぎで視力を著しく低下させたもののレーシックを受けてくっきり視界を手に入れ、四十半ばで老眼を自覚してからは眼精疲労がハンパなくなったため漫画を読むことをあきらめてしまったのですが、その後ラジオの世界にどっぷりハマって毎日はがきが読まれる幸せに浸りながら68歳でこの世から旅立ったそうです。
これはヒドイ((((；゜Д゜)))
