おにぎり
紀伊真美子はごく普通のおばあちゃんである。毎日お饅頭を食べて、毎日おだんごを結う、齢80のおばあちゃんである。今日も今日とて、整形外科でシップをもらってきたあと、行きつけのコンビニで芋饅頭とレトルトパックのご飯を買って家路についていた―――のだが。
キ――キィイイ!!キイイイイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。紀伊真美子の魂と、女神が対面している。
「紀伊真美子さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
紀伊真美子(80)
レベル88
称号:転生者
保有スキル:おにぎり
HP:1
MP:100
「ここは、草原だねえ・・・。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がおばあちゃんの前に現れた!
「なんだね、これは?」
うろたえない、おばあちゃん。
「保有スキルとはなんだね?おにぎり?…ああ、おにぎりが食べたいんだね、ええよ、作るでね。」
うばほん!!!
おばあちゃんの前におひつが出てきた!昆布にしゃけ、のりの佃煮、梅かつおにあさりしぐれ、焼きたらこにとりそぼろ、炒り卵と桜でんぶ、その他色々出てきたぞ!!ただし生物はないようだ!おばあちゃんはおにぎりが傷むのを恐れて、なま物を中身に携えることをしないからだ!!
「いっぱい握るでね、いっぱいお食べね?」
スライムはわくわくして待っている!!次々に握られていくおにぎりに、スライムのテンションはダダ上がりだ!!おっと?いつの間にかモンスターたちがおにぎりまちをしているぞ!
「ええよ、みんな順番にまっとりんね、今から全部握ったるでな。」
おばあちゃんは並ぶモンスターのために、心をこめておにぎりを握った。握り続けた。並んでいたモンスターたち全員におにぎりが手渡された。にこやかにおにぎりを頬張るモンスターたちを見て、おばあちゃんはにっこり笑って人生を終えた。スライムは、おばあちゃんに感謝をして、捕食させていただいた。
「う、うーん???なんか夢でも見とったかねぇ??」
おばあちゃんは時間を巻き戻されて、コンビニ入り口に立っていた。コンビニに入る前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
おばあちゃんは芋饅頭とレトルトパックのご飯を買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「まあ…怖いねえ、なまんだぶ、なまんだぶ…。」
おばあちゃんは、10日後に肺炎をこじらせてこの世を去ったということです。




