取材
麻生志保はごく普通のライターである。毎日おいしいものを食べた感想を文字にまとめ、毎日この記事面白かったですと感想をいただく、齢26のライターである。今日も今日とて、発売したばかりの職場体験レポートに誤字があるのを見つけて落ち込んだ後、行きつけのコンビニで眼鏡拭きと低粘着メモブロックを買って家路についていた―――のだが。
ギュキュ―――ギュキュキキイッ!!キギュ―イイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。麻生志保の魂と、女神が対面している。
「麻生志保さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
麻生志保(26)
レベル7
称号:転生者
保有スキル:取材
HP:27
MP:14
「というわけで、いきなり草原に放り出されたかあ…。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊がライターの前に現れた!
「おおっと!!!スライム出たよ!!ええと!!武器?防具?魔法とか使えないのかな?!」
うろたえる、ライター。
「あっ!そうだ、保有スキル!!取材?ちょっと何それ!戦えるの?!」
うばほん!!!
ライターの手に、いつも使っているメモパッドとボールペンが現れた!!スライムは何を聞かれるのかワクワクしている!
「ええと、スライムさんはどうしてこちらにいらっしゃるんですか?お名前伺ってもいいですかね。好きな食べ物は?ええと生きがいとかあります?好きな異性はいますか?同性でもいいですよ!」
スライムは一生懸命考えている!!
「…なんだ、全然話してくれないじゃん。まあいっか、適当にいろいろ書いとこう。ええとスライムは齢38、名前を美佐枝といい、独身。好きな食べ物は明石焼きで、生きがいはキャベツを刻むこと。好きな異性は…」
スライムは激昂した!!やらせやんけ!!スライムは一心不乱にメモを取るライターに勢いをつけてとびかかり、遠慮なしに捕食した。美佐枝ってなんじゃい!!キャベツ刻んでスライム生を終わらせる気かぁああああ!!!
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
ライターは時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まった前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
ライターは行きつけのコンビニで眼鏡拭きと低粘着メモブロックを買って家路についた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「うぅわっ、もうちょっと早く通りかかってたらひかれてた?!記事は書くけど記事に載りたくはないねえ…。」
ライターは、当たり障りのない記事を書いて安定感のある人気を誇っていたものの、突如入社してきた破天荒極まりないパワフルな記事を書く後輩に飲まれてしまって自分の書く記事に自信が持てなくなりずいぶん長い間スランプに陥ってしまったのですが、ふとライターデビューをした雑誌を見る機会がありその拙いなりに真心のこもった文章を見てツッコミを入れつつも前を向いていた時代を思い出してからは、再び人気ライターとして人気を博し81歳でこの世を去るまでたくさんの人に向けて文字を綴ったという事です。




