導く力、見通す目
上里あゆみはごく普通の占い師である。毎日手相を見て、毎日画数を数える、齢31の占い師である。今日も今日とて、人生相談がしたいだけのお客さんの愚痴を聞いたあと、コンビニで星座盤付きファッション誌とヘアスプレーを買って家路についていた―――のだが。
ギュギュギ―――ギュ―――イッ!!キッギュイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。上里あゆみの魂と、女神が対面している。
「上里あゆみさん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
上里あゆみ(31)
レベル19
称号:転生者
保有スキル:導く力、見通す目
HP:10
MP:109
「というわけで、いきなり草原に放り出されるという、この雑な感じ…まあ受け入れるしかないか。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が占い師の前に現れた!
「うーん、スライムだよね…敵かな?味方かな?」
うろたえない、占い師。
「保有スキルを確認してみようか、導く力、見通す目…占い道具は出てくるよね?」
うばほん!!!
占い師の前にいつもの占いセットが出てきた!スライムは何が始まるのかワクワクして椅子に座った!
「オラクルカードは女神とピクシー…なるほどね。運命のいたずらには気を付けないと。…スライムさんのお名前は…凶画が組み上がっての吉画、大器晩成型で思い込みが激しいけれど思いやりを持てば幸せになる、今は経験を積む時期ね。誕生日はわからないよね、四柱推命は難しいから…次は手相だけど…いたずらカード出てるから不意に触れるのはキケンだな。」
占い師はスライムをじっと見つめた。スライムの表面に、毒液が渦を巻いて文様を作っている。…これは指紋とよく似ているぞ!!
「ははア…気の短さと優しさがたまに暴発を起こしてあとで後悔するタイプね。あなたはもう少し落ち着くべきね。どうする?もっと見る?歩いていけそう?」
ずべしゃっ・・・!!!
占いを続けるか迷っていた占い師の上に、ちょうど頭上に通りかかったワイバーンの糞が落ちてきた。人骨を含むフンは相当に重量感があって占い師は衝撃でつぶれてしまった。スライムは占い師を捕食し、占い師の代わりに歩き続けることを胸に誓ったという。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
占い師は時間を巻き戻されて、コンビニの前に立っていた。コンビニの前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
占い師がコンビニで星座盤付きファッション誌とヘアスプレーを買って帰路についていると、家の近所の交差点で車の暴走事故が発生していた。
「あと少し早く通りかかってたらひかれてたね、そういえばアクシデントの兆候あったもんなあ…怖い怖い。」
占い師は、いい結果が出るまで何度も占わせる常識のない客に悩まされながらも真摯な態度でたくさんの人たちに指針を示し、ずいぶんたくさんの人たちの人生を変えたのち世界の運命を導きたいと願うようになり、ずいぶん尽力してずいぶん疲労したようですが78歳でこの世を去るときはずいぶん穏やかな顔で微笑んでこの世を去ったという事です。




