気のせい
新見朝子はごく普通の怖がりである。毎日背後を気にして、毎日シミュラクラ現象に怯える、齢20のこわがりである。今日も今日とて、友達の顔に人面瘡っぽいニキビを発見して半泣きになった後、行きつけのコンビニでお守り付き雑誌とろうそくを買って家路についていた―――のだが。
ギュキュギュキュ―――キキ―――ッ!キギュイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。新見朝子の魂と、女神が対面している。
「新見朝子さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
新見朝子(20)
レベル4
称号:転生者
保有スキル:気のせい
HP:44
MP:60
「というわけで、いきなり草原に放り出され?!どうするの、私どうしたらいいの、怖いよ!!ねえ怖いの!!!」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が怖がりの前に現れた!
「いやっ!スライムでてきたよ?!逃げ、逃げないと、怖すぎる!!」
うろたえる、怖がり。
「ほ、保有スキル試したら助かる?ねえ何これ!気のせいって何なのよおおおお!!!」
スライムは、戸惑っている!
「ねえ、こんなに怖いのも気のせいっていうの?!どのあたりが気のせいなの?!怖い、怖いんだってばあああ!!!」
そんなに怖がらなくても…。別に何もしてないのにさあ…。
「こわ、怖すぎて死ねる!!なんでこんなに怖い目にあうの!ねえなんか私悪いことした?普通に暗闇が怖くて人の目が怖くてよくわかんない負の思念が飛ばされてきて勝手に呪われて何なの?ねえ私の前世ってそんな悪人だったの?私なんで普通の人間に生まれなかったの?全宇宙っていったい何なの?ねえ、ねえねえ、うふ、うフフフフフフ…!!!
そこまで飛躍できるあんたが怖いよ!!スライムは恐怖で暴走している怖がりを気の毒に思ったので、捕食してあげた。胃袋の中でも怯えて震えていたので、スライムはしばらくしゃっくりが止まらなかったという。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
怖がりは時間を巻き戻されて、コンビニの入り口に立っていた。コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
怖がりはコンビニでお守り付き雑誌とろうそくを買って帰路に就いた。家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もうちょっと早く通りかかってたら怖いことに、なってたよぅ…。ぐすっ…。」
怖がりは、ちょっとしたことでも怖がるのでずいぶん周りの人たちからいじられていたのですが、ちょっとだけ勇気のあるヘタレがたいしたことのない恐怖心を拭ってくれたおかげでずいぶん前を向くことができるようになり、時折派手にパニクるもののまあまあ穏やかに暮らしたのち70歳の時に伴侶とともに事故に見舞われ、共にこの世を去ったという事です。




