第5球:壁打ち中
ピンポン球独特の音が耳につく。
ラケットから打たれたピンポン球は、床にワンバウンドして壁に当たり又ラケットに戻ってくる。
単純なようでいて少し気を抜くとピンポン球はあさっての方向に吹っ飛んでいくので気は抜けない。
……とは言っても、それは僕が初心者からなのですが。
中学からやっていたような人は同じような人と雑談をしながら壁打ちをしている。
いや、正確には一人だけ上手くとも浮いてる人がいた。
その人は180近くの身長と甘いマスクを兼ね備えているイケメンだ。
勿論その容姿を取れば女受けする事間違いなしでしょう。
ただし…神様も完璧な人間は作らない主義なのかも知れない。
誰でも欠点や問題点があるわけで、彼の場合ファッションセンス……いやこの表現は正しくない。ジャージであるからして格好は皆同じなのだが、彼は何故かサングラスと黒い皮の手袋をつけていた。
明らかに室内しかも学校でするべき格好ではない。意味不明っしょ?
だから皆、彼には近づかない…いや避けているのでしょう。
そして当然、めんどくさい事が苦手な僕も近づかない。
◇◇◇
――休憩時間――
休憩は菊池部長が気まぐれで取っているみたいだ。
休憩時間から頻度まで全てが気分で決まっているのはどうかと思う。
この時間に僕がすべき事は…交流を広げる事です。
めんどくさがりやの僕が意外っしょ?
でも逆に後々になって交流が無いほうがめんどくさい事になる場合が多いのです。
そこで適当に目星をつけて僕と同じ新入生に声をかける。
「そのラケットどうしたんっしょ?」
「あ、これ部活入る時に買ったんだ」
何の特徴も無い彼は僕の言葉を聞いて何の特徴も無く返答してきた。
……駄目ですね。何か特徴が無くてはキャラが確立されないのにレギュラーは無理でしょう。
え?何の話かって?さぁ?
彼よりもラケットに興味がある。
新しい木独特の匂いがする。まだ傷が一つ無い…初日からあっても困るのでしょうが。
何となく欲しくなる。人とは影響を受けやすいものらしい。
しかも、どうせ必要になるものだし明日は土曜日だし買いにいこうかな?
……ラケットに気を取られて彼に対しての返答を忘れていた。
僕から話かけておいてこれは失礼に当るので返答を返す。
「へぇ、そうなんで――」
「――よっ、ユウ君。ちゃんと部活来てるな!ハハハハ、偉いぞ偉いぞ」
いきなり話に乱入してきて僕の言葉を遮ったのは語るまでも無い。
ユウ君と呼ぶのは今のところ彼女――平井先輩しかいない。
この様子では女卓も休憩に入ったようだ。
「といいますか、もし来なかったら捕まえにくるっしょ?」
そういうと平井先輩はアハハハと笑い「よく分かってるな」と言ってきた…はぁ。
因みに元々僕と話していた無特徴キャラはのけ者にされていた。
哀れだが彼はそこまでの存在だったということでしょう。この世界では。
「平井先輩ところでラケットってどんな基準で選べばいいんでしょうか?」
「ん?そうかまだ買ってないのか。なるほどなるほど。……いきなりだがユウ君明日は暇か?」
へ?
「いや…暇というか明日はラケットを買いに行こうと思っているのですが」
「だから、アタシが手伝ってやろうっていうことさ。何も知らないで買うのより少しは良いだろ?」
……確かに僕にとっては頼れる相手がいないので頼もしいが。
一般的にソコまでして貰って良いのでしょうか?
しかも卓球部とはいえ、男子卓球部と女子卓球部では部活が違う。
平井先輩がソコまでする必要性は全然無い。
「ハハハッ責任があるのさ。男子卓球部のこととはいえ、ユウ君みたいなめんどくさがりを引っ張り込んでしまった責任がさ」
と言って軽くウィンクをする。
……ところでですけど、僕にサトラレ属性でもあったのでしょうか?




