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第4球:選択中

さて?どうしたものでしょうか?

僕は卓球場の扉の前で思案にくれている。

この扉は接着剤で入念に固定されているかの如く、僕の腕力じゃビクともしない。

勿論これは比喩であって実際に扉が接着剤で固定されているわけではない。

とあれば、問題は身体能力では無く心の問題であるんでしょう。


昨日は衝動に任せて卓球部から逃げてきたまでは良かったのでしょうが、そのせいで今日は入りづらいったらありゃしない。

普段の僕であればココは踵を返しこの扉の前から去っていく。

しかし、平井先輩という存在のせいでそれを行うのも難しいときている。

なんとなく……ではあるが彼女なら地の果てまででも逃げる僕を追ってきそうなイメージがある。しかも、マシンガントークをずっと発動しながら息も切らさずに。


思案の結果――

僕は扉を開けた。ピンポン球がポンポンと四方八方で跳ねる音と体育館履きがキュッと擦れる音がする。

既に男子卓球部の練習は始まっていたようだ。


「すみません。教室の清掃で遅れてしまいました」


頭をペコペコと下げながら僕は言う。

当然ながら嘘です、遅れた理由は主に扉の前で思案していた時間なのですから。


「よぅ〜、一ノ瀬君。ま、気にすんなって〜」


僕達の部長、健ちゃんもとい菊池健一郎が返事を返してきた。

練習を始めていたせいか彼の茶髪が少し乱れていた。


「一ノ瀬君はまだラケット注文してないんだろうから体育の授業で使ってる物を使え〜」


黄色い籠に十数個入っているラケットを指して言ってきた。

僕以外の新入部員を見ると半数はマイラケットを持っていて、残りは授業のを使っている様子です。

中学の時から卓球部だった者や元から卓球部に入るつもりだった者は持っているのでしょう。

まぁ……所詮壁打ちなのでどんなのを使っていても大差は無さそうと思うのだけど。


僕は籠に入っているラケットを幾つか手に取ってみる。


「あ〜、それはペンハンドだな〜」


菊池部長が僕に、僕が今手に取っているラケットを指していう。

片面にのみゴムがついていて角張った感じのラケットだ。

へぇ、と思いながらそのラケットを観察する。

次に僕が手に取ったのは両面にゴムがついていて丸い感じのラケットだ。

それを指して菊池部長は「シェークハンドだな〜」と言ってくる。


僕は結局【シェークハンド】と言われた方のラケットを使う事にした。

理由?両面にゴムがついていた方がお徳そうでしょ?

しかしながら、所詮体育に使うラケットであるから微妙にボロッちい。


その後、僕は新入生が壁打ちをしているところに紛れていこうと思ったのだが、最後に気になっていた事を菊池部長に尋ねてみてみた。


「昨日逃げた事何も詰問してこないんでしょうか?」


それを聞いた菊池部長は、少し苦い顔をした。


「ああ〜その事か〜。流石にアレはキツかったからな〜」


「へ?どういうことでしょうか?」


「いやな〜……綾乃が……クセになったらどうする気だ……?」


ブツブツと呟く菊池先輩を見て。

【フフッ相変らずバカなんだから調教でもしてやろうか?】

と昨日の帰り道に聞いたセリフが蘇ってきた。

僕の背中に季節が巻き戻ししたかのような寒気がゾクッと伝った。

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