8 探索
屋敷から結界の外側まで一気に飛んで来た。もちろん、ワタシはシズクに、抱っこしてもらってだよ。
「空を飛んで行っちゃうと、直ぐに目的地まで着いちゃうから、ここからは歩いて行こう。」
今のところ探索をすぐ終わらせる気はない。いつでも、シズクの転移魔法で帰れるからね。何日か、かけて探索を楽しむ予定だよ。
「了解です。」
ライが答える。
隊列は、ライが先頭で、真ん中にワタシとシズク、一番後ろにレフィだ。
「姫様、結界の外は魔物が生息していますので、大丈夫だとは思いますが一応ご注意を。」
「うん。ワタシは攻撃手段がないから見てるだけだよ。防御は完璧なんだけどさ。」
「アカリは神力があるから、アンデットならイチコロだよ。」
と、レフィが教えてくれる。
「そっか。アンデットが出たら試して見ようっと。」
そんなことを話ながら、川沿いを特に何もなく、2時間くらい歩いた。
「太陽も真上に来たことだし、この辺りで昼ご飯にしよう。」
ワタシに気を使ったんだろう。先頭のライが言った。
「そうですね。食事の準備をします。」
メイドのシズクが準備を始めた。収納魔法からイスとテーブルを出して、上にエレナが作ったお弁当が置かれる。
ちなみにシズクの収納魔法は、空間魔法と時空魔法の合成魔法だから、空間内では、時間停止する貴重な魔法だよ。
「「「いただきます。」」」
作りたてのようなあったかい弁当を食べる。
「「「ごちそうさま。」」」
「2時間くらい歩いたけど、魔物いなかったね。」
「姫様の張った結界魔法が近かった為、魔物やアンデットは近寄らないのでしょう。」
シズクが、後かたずけしながら答える。
「それじゃ午後は出るかもね。」
みんなはまた歩きだす。そして、1時間くらいたったころ、いのししの形をした魔物があらわれた。
ワタシが身構えると、いのししは突然、倒れる。ライが瞬く間に、いのししのまえに移動すると、顔面にパンチを入れていた。
「歯ごたえがないな。」
いや、ライが強すぎるからだよ。心の中でツッコミを入れる。
「このいのしし、食べられるかな?」
レフィがシズクに聞く。
「少々お待ちください。」
シズクがいのししの死体に触れ、呪文を唱える。
「人体に影響のある毒は、含まれていません。食べられますね。」
「よし、持って帰れば、エレナが美味しく料理してくれるね。」
言うまでもなく、レフィは食べ専で、彼女自身料理をしているところを見たことがない。
「食べられそうな魔物は、見かけしだい倒しておくよ。」
そう言い、いのししの死体を自分の魔法袋にしまって歩きだす。
しばらく歩いていると、今度は3メートルを越える熊の形をした魔物あらわれた。
「あれは、ダークベアーだ。」
ライが教えてくれる。
「今度は、私にまかせて。」
そういってレフィは、無詠唱で大きな水の玉を作り、ダークベアーに向けて飛ばした。水玉が顔を包むと息が出来ずに苦しみだし、しばらくの間もがいた後、息絶えた。
「このやり方は時間がかかるけど、素材が傷つかないから、最適なのよね。」
あんなでかい魔物を、簡単に無詠唱で倒すなんて、さすがレフィだね。
「この魔物も毒がないので、食べられそうです。」
シズクが鑑定した結果を伝えると、レフィは、そそくさと自分の魔法袋に、ダークベアーの死体をしまう。
「そろそろ日も傾いてきたし、今日はここまでにして帰ろっか。」
「かしこまりました。明日は、ここから再開ということでよろしいですか?」
「うん。そうだね。」
シズクは、転移の為にマーキングをする。
「それでは屋敷に戻りますので、皆さん集まってください。」
ライとレフィとワタシは、シズクに近寄ると、転移魔法を唱える。そして一瞬で、屋敷の前に戻って来た。